Pleasant place 4

お兄さんにはお見通し　1 ページ44

私達が恋人同士になってもなんでも、これまでと変わりないのは、私達それぞれの仕事なわけで。


メキシコ滞在もあと僅かとはいえ、今日もスケジュールはばっちりぎっしり入っている。


中々自分の部屋に戻ろうとしないテヒョンをなだめたり、おだてたりしながら、それでも最終的には口を尖らせた彼を押し出すようにして部屋から追い出した。


ふぅと息をついたのもつかの間、ふと時計に目をやれば、本日の集合時間の30分前だということに気付いてぎょっとする。




30分でシャワーを浴びて化粧をして支度とは。




テヒョンは仕事の時にはヘアメイクが入るから良いけれど、私はそうは行かない。


髪を洗って乾かしていたらかなりぎりぎりだ。なんとかならないかと鏡を見て、絶望した。


昨晩髪を乾かさなかったせいでひどく寝癖がついている。


そもそも汗をかいたのだからこのままでは気持ち悪い。


慌ててシャワーを浴びて、髪を乾かして、薄めに化粧をした。


服も適当に、細身のパンツにTシャツを着て、その上にシャツをひっかけて、中途半端に乾かした髪を束ねながら部屋を出る。


とりあえずコーヒー位は買いたいと、ぎりぎりで申し訳ないけれど、カフェでテイクアウトのコーヒーを注文していると後ろからポンと肩を叩かれた。





「こんなぎりぎりなんて珍しいね」





振り返るとジンオッパが「オレにもコーヒー頼んで」と言ってにこりと笑った。



ちょっと時間がなくて、と言葉を濁せば、ジンオッパは顔を覗き込んでくる。





「疲れた顔してる」





寝不足の上、それを隠す化粧もする時間がなかった私はきっとひどい顔をしていて、ジンオッパのいつもと変わらないハンサムな顔がまぶしかった。





「・・・ジンオッパは今日もカッコいい」





あんまり顔を見られたくなくて、オッパの胸にこてんと額を付ける。


ジンオッパはいつもみたいにやさしく頭を撫ぜてくれたけれど、その手がふいに不自然に止まって、私は顔を上げた。

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