打算は河口へ【tn】 ページ37
私は彼の幸せを一度だって願ったことがない。
昔は本当に幸せを願ったこともあった。彼が日々笑って過ごし、危険から程遠く傷付かない所で彼は歳を重ねるのだ。綺麗な下流でたゆたうように、小さな湖畔に浮かぶような生活を送ってほしいと思った。
けれど、その隣にはいつも私が居た。
彼の隣で笑うのは私。彼が傷付いた時に慰めるのも私。彼の隣で歳を重ねるのも私のはずだった。
しかし、ある時それがエゴだと知った。きっかけなんてもう忘れてしまったし、きっかけなんて無かったようにも思える。思考のつみかさねがもたらしたのだ。結局は、私が幸せになりたかっただけなのだと結論付いた。
私は彼の目線が欲しくて、彼からの愛が欲しかった。結局はそういうことだった。彼の分身でも私は幸せになれるのだろう。本質的には欲しがっていなかったからだ。多欲な私はとても浅はかだったのだ。
けれど、彼が他の誰かに奪われてしまうのは酷く心が苦しかった。
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スマホに指を置いたままじっと固まる彼を見ていた。十字を切るようにしどろもどろになりながらもフリックするが、すぐに消しているようだった。そして、溜め息をつく。それから、眉を八の字に曲げてこちらをちらりと伺う。
私はそれを居酒屋の喧騒に紛らせて見なかったことにした。ビールを煽って視線を掻き消す。しかし、それでもなお視線を感じてたまらずに口を開いた。
「メールの文くらい自分で考えなよ」
話がある、と言われて上機嫌で指定された居酒屋に行くと彼はもう先に席についていた。彼の向かいに座り、彼の顔を窺うと神妙そのものだった。何かよっぽど悪いことが彼の身に起きたのか、それとも私が酷く懇願している事なのか期待を膨らませるとやっとのことで彼が口を開いた。
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コットンの森(プロフ) - トクメイキボウさん» 嬉しいお言葉に心臓がぎゅっとなりました。純粋に嬉しくて何回もコメントを見返しちゃいます。無い文才を捻り出した甲斐がありました。短編は長編が終わり次第再開が出来ればと思っています。お読み頂き、そしてコメントありがとうございました！ (2019年3月31日 17時) (
レス) id: c3504fefeb (このIDを非表示/違反報告)
トクメイキボウ - コメント失礼します。完結おめでとうございます。実は貴方様の作品を以前から拝読させていただいておりました。貴方様の創る世界観が大好きです。短編集が終わるのは悲しいですが、長編の方も引き続き応援させていただきます。頑張ってください。コメント失礼しました。 (2019年3月31日 16時) (レス) id: 9fdc769b3d (このIDを非表示/違反報告)
コットンの森(プロフ) - パピヨンloveさん» しばらくログインしていなくて今しがた気づきました…。返信遅くなって申し訳ありません。題名は｢かくかくのさいじょ｣と読みます。赫赫で赤々と光輝く様や、業績や名声が輝かしく現れる様などの意味があります。個人的にそういう女性が好きなので題名につけました。 (2019年3月10日 12時) (レス) id: c3504fefeb (このIDを非表示/違反報告)
パピヨンlove - 読んでいて、凄いと思いました！！これからも頑張って下さい！！ちなみに、題名ってなんて読むのでしょうか？ (2019年2月16日 14時) (レス) id: d07448dafe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：コットンの森 | 作成日時：2018年9月20日 0時
