3 ページ32
ガキの面倒なんてこの俺がやるとは思わなかった。
あのあと彼女はあっさりと亡くなってしまった。元々体が弱かったのに無理を重ねてしまったからだ。過労で、持病もそれで悪化してしまった。そして、二日前に彼女は息を引き取った。
死に際、彼女はうわ言のように神への愛を呟いていた。ロザリオを握り締めて、茨の王とその父に訴えかけていた。
孤児院の扉を開くと、そこには子供特有の活気はなかった。前に来たときは嵐のように暴れ散らかっていたのだが、さすがにそれはなかった。大声をあげて泣くものもいれば、我慢しようとしているものもいた。けれどやっぱり出来ずに、わっと泣き出してしまう。
俺は寄ってそばに行き、ハンカチで子供の顔を拭った。
｢ドクター。シスターはてんごくで幸せにしてるかな｣
｢天国なんてありゃしねぇよ｣
涙と鼻水でぐちゃぐちゃ顔を晒すガキに言った。
拭っても拭ってもあふれでる涙にハンカチはもう歯がたたなかった。おまけに鼻水でぐちょぐちょするし、このハンカチはもう諦めるしかないようだ。
「シスター言ってたよ。死んだ人はかみさまの国にいくんだ。シスターもそこにいっちゃったの？」
純粋な瞳が俺を見上げる。
ここで彼女ならきっと肯定を表していただろう。神を信じる者は永遠の命を手にいれ、天の国へ迎えられると。しかし、実態がなければ永遠の命なんて意味をなさないし、天国なんて地獄とも変わらない。
「ええか。シスターも神もイエスも嘘つきなんや」
子供は俺の話を黙って聞いている。
そういえば、彼女が何か言っていた。子供は天国に一番近い存在だとかって。俺も昔は一番近かったのだろう。
「神は死んだ」
お前はまた見殺しにしたな。
.
最近スランプで何も書けませんでした…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コットンの森(プロフ) - トクメイキボウさん» 嬉しいお言葉に心臓がぎゅっとなりました。純粋に嬉しくて何回もコメントを見返しちゃいます。無い文才を捻り出した甲斐がありました。短編は長編が終わり次第再開が出来ればと思っています。お読み頂き、そしてコメントありがとうございました！ (2019年3月31日 17時) (
レス) id: c3504fefeb (このIDを非表示/違反報告)
トクメイキボウ - コメント失礼します。完結おめでとうございます。実は貴方様の作品を以前から拝読させていただいておりました。貴方様の創る世界観が大好きです。短編集が終わるのは悲しいですが、長編の方も引き続き応援させていただきます。頑張ってください。コメント失礼しました。 (2019年3月31日 16時) (レス) id: 9fdc769b3d (このIDを非表示/違反報告)
コットンの森(プロフ) - パピヨンloveさん» しばらくログインしていなくて今しがた気づきました…。返信遅くなって申し訳ありません。題名は｢かくかくのさいじょ｣と読みます。赫赫で赤々と光輝く様や、業績や名声が輝かしく現れる様などの意味があります。個人的にそういう女性が好きなので題名につけました。 (2019年3月10日 12時) (レス) id: c3504fefeb (このIDを非表示/違反報告)
パピヨンlove - 読んでいて、凄いと思いました！！これからも頑張って下さい！！ちなみに、題名ってなんて読むのでしょうか？ (2019年2月16日 14時) (レス) id: d07448dafe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：コットンの森 | 作成日時：2018年9月20日 0時
