04#このまま眠らせて ページ6
(Side,チャクロ)
Aが行方不明になってから、もう随分と経った。
僕は14歳、サミは13歳だった。
彼女が砂海に消えたのは7年前のこと。
何かと手に負えないAを抑える事が出来ていた団長さんも、
彼女が砂海へと消えた時は驚いた顔をしていた。
僕だって驚いた。
遠くから走って来ると思えば、
そのまま泥クジラの外へと飛び出し、
無表情で砂海へと消えて行った。
長老会でも問題にはなったし、
何しろ、体内モグラのメンバーは放心状態だった。
Aが泥クジラに遺して行ったのは、
彼女がいつも口遊んでいた小唄。
サミは「いつか帰ってくるといいね」なんて言ってたけれど、
砂海で溺れれば死んでしまう。
還ってくるのは“スナモドリ”の時だけだ。
そう言っていたサミも先日の帝国の襲撃で亡くなってしまった。
「Aが聞いたら……何て言うんだろう」
「何て言うんだろうね」
「す、スオウ……!」
「Aのこと、だよね」
「あぁ、うん……。サミは“いつか帰ってくる”って言ってたから、
でも……もしかしたらAなら、って思わなくもない」
「確かに」
スオウはそう言ってクスクスと笑った。
未知の領域にいるAなら、って。
そういえば、彼女がいなくなったのはこのぐらいの時期だっただろうか。
「……Aがいたら、サミ助かったかな」
「それは分からない。
いくら足が早くても、彼女は体内送りの常連だよ?
目隠しだっていつも着けてた。直ぐには来れない」
「……だよね」
あぁ、そうだ。
Aもオウニと同じでウイジゴケを連れていたっけ。
彼女の肩や、髪の隙間、服の中にもいたかな。
夜明け、彼女はいつも太陽が昇ってくるのを待っていた。
そんな彼女を見ていると、
ウイジゴケが光ってとても綺麗だった。
「――夢の先を見たいからこのまま眠らせて……」
「あ、それ……」
「Aが歌ってたやつ。踊りは忘れちゃったなあ」
「……Aが踊らなきゃ、その歌は」
「そうだね」
(A……)
14人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:綺弌 | 作成日時:2018年2月12日 21時