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File.10 / 安室透という男 ページ2
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きっとこれは夢だ。夢に違いない。
そうじゃないとありえない。
『……』
｢……おい、｣
｢いらっしゃいませこんにちは｣
無愛想という言葉がお似合いだった元彼が笑顔を振りまいて接客しているなんて天地がひっくり返ってもありえない。
隣にいる伊達班長も同じことを思っていたのか、引きつったような顔でわなわなと震えあがる。
『……零？』
｢どなたの事ですか？｣
｢いやお前降谷｣
｢僕の名前は安室透と申します｣
震える指で彼を指しながら名前を呼ぶと、爽やかスマイルで言葉を強引に遮られる。
全く笑っていない目からは余計なことを話すな、という圧が伝わってくる。
｢こちらの席へどうぞ｣
『いや今日はソファー席に』
｢どうぞ｣
｢『……ハイ』｣
最早拒否権のない言葉に泣く泣くカウンター席に腰かけると、テーブルを挟んでエプロン姿の零ならぬ安室さんが正面に立つ。
にこにことしている顔が怖すぎて震えが止まらない。
チラッと班長を盗み見したら、冷や汗が止まらないのか顔面蒼白になっていた。
きっと松田や萩原がこんな零の姿を見たら腹がよじれるくらい笑い転げそうだな、なんて思いながらガタイのいい肩を叩く。
『ねぇ、班長』
｢ああ、……あれは降谷だよな｣
『多分…』
｢あんな顔見た事ねえよ｣
『私だってないよ！』
｢お前の彼氏だろ？！｣
『別れました』
「はぁ！？！？！」
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作者名：來夢
| 作成日時：2021年12月6日 0時
