解体できない代物 【松田陣平】

CASE:08 もう、 “大切な人”を失いたくないから…。 ページ10

A「萩原先輩！そんなの恐れ多すぎますよ！私が“あの人”と肩を並べるなんて！“あの人”の解体スピードの平均はどの事件でも３分台ですよね？だけど、私は…１分半も遅れた。これが実際の事件現場なら…。１秒がどれだけ大事か！」

ほんの少し取り乱してしまうのは、７年前や３年前……そして５年前の事件のことが脳裏によぎるからだ。
実際に私が事件の当事者になったのは、５年前の"お兄ちゃんが犠牲になった事件"だけ。

でも、７年前の爆弾事件の時…萩原先輩は爆風を受け、「全身"むち打ち"になって病院に搬送されてきた」…と当時のことを知る私の先輩看護師から聞いている。
それに、３年前…“あの人”も――。

怖いのだ…。これ以上“大切な人”を失うのが…。
そして萩原先輩たちは、私が警察学校に入った期間で…とても“大切な人たち”になったのだから―。

萩原「Aちゃん。今は練習だし、誰も傷いてないから大丈夫…落ち着きな。」

(ハッ！いけない、取り乱した。)

座っている私の右肩に置かれた萩原先輩の手が暖かくて、落ち着きが戻ってきた気がする。

萩原「それはそうと、“アイツ”の…解体時間の平均知ってるなんて、捜査資料すげー見たんだね。…筋金入りって感じか。気持ち、本物で…ある意味ビビってる。…けど、それだけの覚悟があるならいいんじゃない？俺は協力するよ。」

A「私の本気度、やっと本当に信じてくれましたね…萩原先輩。…捜査資料と爆弾の構成図は、去年警視庁に入ってすぐ…くまなく見ましたよ。」

宮本「ねぇ！２人だけで会話しないでよ。そもそも、どうしてAちゃんが爆弾のレプリカの解体なんてしてるのよ、ランチから戻ってきてビックリしたんだからね！それに、“アイツ”って誰のことよ？分かるように説明して！」

A「私にとって、機械いじりはストレス発散であり…趣味ですよ。」

萩原「えー。宮もっちゃんが“アイツ”を知らないってことはないよ。"捜一(そういち)"の佐藤ちゃんと仲良いでしょ？」

宮本「えっ、美和子？美和子と関係ないで、しょ…？……あっ、そういえば！…松田さんね！？強行犯三係に異動する前は、確かに爆発物処理班だった！」

同僚B「“松田さん”？」

宮本「そっか…君も去年から入ってきたし、交通部(うち)は"捜査一課"とも"爆発物処理班"とも接点少ないから分かんなくて当然かもね。」

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