実況者夢小説~曲パロ短編集~ パート３

メアリーと遊園地　レトルト　続き ページ40

あぁ、何やってんやろ。妹のためなら何だってやってやる覚悟だったはずなのに、結局は力を与えてもらうだけ与えてもらって、代償も対価も払いもせずに逃げている。
道徳的にこんなの可笑しい？逃げて当然？じゃあそう言うお前は貧乏な食い逃げ犯が免罪になると思っとるのか？

いつかヒーローになりたいと願っていたAの笑顔はもう片鱗すらも見せず、ただただ無表情で、呆然と俺のことを見ていた。
待ってろよ、すぐに取り戻してあげるからと言っても伝わるはずがなく、そのまま夜の遊園地の空へと消えていく。

そんな夜の遊園地に巣食う着ぐるみ達は、悪魔の手となり足となり、逃げ惑う俺を必死に追いかけていた。可愛らしさを意識したのか大きい瞳はぎらついていて、捕まったらどうなるかわかったもんじゃない。

ダメだ、今捕まったら俺はまぁともかく、Aがどうなるかわからない！
またあの狂った魔法使いの実験体になるかもしれない、逃げろ、逃げろ、逃げろ！！


お姫様が夢見るお城は、最早ホラー映画の舞台となっていた。ガンギマリの着ぐるみと、そいつらを使役する悪魔が、一人の青年と、青年が抱える少女を追っている。

大丈夫、大丈夫だから…俺なら、大丈夫！！
最上階のテラスに来る頃には、謎の自信と策が沸いて出てきていた。

「ほーれほれ！もうここから飛び降りるしかないんじゃないの〜！？」

遂に本性らしきものを露呈させる魔法使いに向けて、俺はある書類を出してみせた。
何十行にもわたる文字列をチラ見した後、魔法使いは俺の顔を見た。

きっとその顔は笑っている。

「魔法使いさん、これが俺達の間にある契約書とするなら…」


A、その感情のない目で見てろよ…
今、未来を変えてみせるから！！

ビリィッ……


「……！？」

俺はその契約書を、目の前で破り去ってみせた。
粉々に、何も読めなくなるくらいに。

「Aにそんな…魔法なんて要らない！妹は俺が守ってみせる！」
「…そーかそーか」

「俺はAに力を与えるためなら何だってするって言ったよな…あれは嘘じゃないよ。
俺は、Aを守り、彼女が自分で身を守れるくらい強くなるまで、何だってしてあげるんや！いいか！？お前はもうお呼びじゃないんや！！」

方言さえも包み隠さず、大声を張り上げ、威勢張って、魔法使いに堂々と告げた。


「…別にいいけどぉ？フン、そいつから魔法を消せるもんなら消してみろよ。」

＊
メアリーと遊園地 くるりんご

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