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その場全体に衝撃が走る。
スパイという考えが土台として有ったが、真逆王族とは思ってもみなかった。
「あの騎士達を殺したのも、シュルクなの?」
「ん?うん。王族として教育は受けてるし、実際は……多分エルシアよりも強いよ?」
「……」
重い沈黙の中、シュルクが近付いてくる。
エルシア側からはリーアが、シュルク側からは図太い男の人がシュルクを止めようとしたが、止まらない。
「はい、これ。エルシアにぴったりだと思うよ」
何処から取り出したのか、大きな植木鉢を差し出されて目を丸くする。
「ふふ、じゃあね。さ、後残ってる奴等は殺しちゃって良いよ」
そう言うと、シュルクの後ろに立っていた人物が消える。
否、瞬間的に移動したのだ。
途端にエルシアの後ろ……騎士団の仲間達が悲鳴を上げる。
急いで振り返れば、血飛沫。
「え……」
「僕はね、君だけが生きて居てくれれば良いんだよ。だって目的は君なんだから。もう殲滅終わったかな?帰ろっと」
「私、だけが……」
エルシアだけが生きて居れば良いというのは、どういう意味なのか。
其れを問う暇も無く、シュルクはその場から去って行った。
前を見れば、炎によって焼かれた跡地。
後ろを見れば、倒れる仲間’だった’人達。
「私の、全てが……」
この状況に陥らせたのはシュルク本人。
彼の国では無い。
恨むべきは、シュルクだけだ。
そんな黒い考えが浮かぶ中で膝をつき、目に入ったのは手渡された植木鉢に植えられた綺麗な紫色の花。
トリカブト、という名前だった筈。
それに、確か花言葉は……
「そっか……そうすれば良いんだ。こんなの簡単な事なのに、思い付かなかったなぁ……」
ゆっくりと立ち上がる。
その為には先ず、この状況を何とかしなければ。
王城に行けば、話を聞いて貰えるだろうか。
「……ふふふ、この騎士団の栄光を終わらせる事は出来ない。だからシュルク、待っててね」
私が貴女に、
──復讐してあげるから。
【終】憎悪・紫
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作者名:黒洞揚羽 x他6人 | 作成日時:2020年11月29日 1時