11. Stay with me.【6/12】 ページ10
「手紙、コリーから?何だって?」
ピーターに聞かれ、シリウスははっとした。
「ジェームズに、もう一度エヴァンスを誘うよう伝えてほしいってさ。ただし、紳士的に、落ち着いて、誠実に、だと」
「ワーオ、彼女に何か言ってくれたんだ!さっすが僕らのA」
「Aって呼ぶな」
「オーケー。さっすがパッドフットの愛しのコリーちゃんだ」
ジェームズはさっと髪を撫でつけ、リリー・エヴァンスのところへ向って行った。驚いたことに、ジェームズはリリーのオーケーをもらって帰ってきた。リリーは、あくまでジェームズの悪戯を阻止する監視が目的だと言ったらしいが、それでもジェームズはパートナーを得たのである。Aは優しい。
薬草学の教室が行われる温室に入ると、入口のすぐそばにAが友人のメアリーと一緒に立っていた。シリウスの五年以上に渡る観察では、Aはいつもできるかぎり先生に近いところで熱心に授業を聞くはずなのだが。
「おはよう、シリウス」
またAがにっこりと笑ったので、シリウスは呆然として「おう」としか返せなかった。Aが自分からわざわざシリウスに声をかけてくるなんて、信じられないことだった。
それに、シリウスの目がおかしいのでなければ、今日のAはすごく可愛い。頰が薄いピンクに染まり、長い睫毛に縁取られた丸い黒い目がシリウスをじっと見つめている。艶やかな桃色の唇はたっぷりと潤っていて、シリウスはそこに自分の唇で触れたいという欲求に駆られた。
「今日のコリーは何だか可愛いね」
ピーターが言った。先を越された悔しさに、シリウスは顔をしかめた。Aはピーターの言葉に「ありがとう」と頰を赤らめ、ちらりとシリウスを見上げた。またシリウスの心臓が跳ねた。なんで俺を見るんだ?
「……髪。珍しいな」
シリウスがようやく言うと、Aは照れたようにはにかんだ。
「今日は『薬草学』があるから」
作業の邪魔にならないように? いつもなら、髪が邪魔になりそうなときは、その場でささっと一つ結びにするだけなのに。そしてシリウスは、そのAの仕草が何故か好きだった。
「リーマスが休みで残念だったな」
シリウスが同情を込めて言うと、Aはしょんぼりと肩を落とした。
スプラウト先生が温室に入ってきて、今日の授業は巨大に育った苗株の植え替えをすると発表した。場所を取るので、作業は校庭に出てやるらしい。
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Helga(プロフ) - ノさん» 一番好きだなんて嬉しいです!(*´>∀<`*)たくさんのときめきをご提供できるように今後もがんばります(*´∇`*) (2020年5月20日 17時) (レス) id: 4936191a5f (このIDを非表示/違反報告)
ノ(プロフ) - シリウス落ちの小説の中でいちばん好きです!ときめきが止まりません… (2020年5月20日 15時) (レス) id: 9ec259d83f (このIDを非表示/違反報告)
Helga(プロフ) - ケイトリンさん» なんと!こちらでも見つけて頂けるなんて嬉しいです(*ノω・*)てれてれ 今後とも楽しんでいただけるようがんばります! (2020年5月19日 22時) (レス) id: 4936191a5f (このIDを非表示/違反報告)
Helga(プロフ) - はなさん» ありがとうございます!読み返して頂けるなんて嬉しい…!!引き続き楽しんでいただけるようがんばります(*´∇`*) (2020年5月19日 22時) (レス) id: 4936191a5f (このIDを非表示/違反報告)
ケイトリン - pix○vでも読ませて頂いてます!本当に面白いです!毎日の楽しみにしてます(笑)無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年5月19日 18時) (レス) id: a8b20e8257 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Helga | 作成日時:2020年5月16日 10時