5. Please get attached to me.【6/9】 ページ39
「杖が最後に使った呪文を再現させる魔法だ。最後に使った魔法は覚えてるか?」
「えっと、何だったかな……」
「まあ、やってみればわかるだろ。プライオア・インカンタート」
シリウスが杖を一振りすると、Aの杖が魔法を発したのがわかった。次の瞬間、Aは首元を何か強い力に引っ張られて、前のめりにぐらついた。
「わあっ」
予想以上の強さに転びそうになり、思わずぎゅっと目を閉じたが、床に倒れ込む事態にはならなかった。
驚いて目を開けると、シリウスが咄嗟に腕を伸ばして受け止めてくれていた。
首元のネックレスがゆらゆらと揺れているのに気が付いて、Aはようやく思い出した。
「ご、ごめんなさい、朝、呼び寄せ呪文を使ったんだった。ネックレスを……」
「大丈夫か?」
「う、うん、あ、ありがとう……」
シリウスの逞しい腕に包まれていることを自覚した瞬間、Aの顔がカーッと火照った。少しだけ甘く、すっきりと洒落た香水の香りに心臓がドキドキする。
無意識に息を止めてしまったAは、シリウスがそっとAから腕を放してくれると同時に、勢いよくシリウスから距離を取り、ほっと息をついた。Aのその反応はシリウスの機嫌を害してしまったようだ。
「おい。さすがに傷つくんだけど」
「ご、ごめんなさい……」
「他の奴には平気で愛想を振りまいてるじゃないか。そんなに俺が嫌いかよ」
シリウスは腕を組んでAを睨み付けている。シリウスの前から逃げたい気持ちに負けそうになるが、両手をきゅっと握り締めて何とか耐える。
自分から取った距離を縮めるため、Aは一歩、また一歩と、ゆっくりとシリウスの方に向かって足を進めた。
手を伸ばして届くか届かないかくらいの距離まで詰めて、Aはすうっと息を吸った。
「シリウスのことが嫌いなわけじゃないよ。ただ、どうやって接したらいいのか、わからないの。シリウスのこと、友達だと思って接していてもいいの?」
好いてくれている人に、同じ気持ちの好きを返せない場合、どうするのが正解なんだろう。友達になれるものなのだろうか。
「いいよ。避けられたりするよりは、それでいい」
そう言ってシリウスは、Aの頭をぽんぽんと優しく撫でたので、下を向いたAにはシリウスの表情がよく見えなかった。
ほら、続きやるぞ、と雰囲気を切り替えるように言ったシリウスに、Aはほっと安堵した。
5. Please get attached to me.【7/9】→←5. Please get attached to me.【5/9】
113人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Helga(プロフ) - ハリネズミさん» コメントありがとうございます!嬉しいです。励みになります〜! (2020年5月10日 14時) (レス) id: 4936191a5f (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミ - 面白いです。更新楽しみにしてますー! (2020年5月7日 10時) (レス) id: 48ddc9040e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Helga | 作成日時:2020年5月1日 22時