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2. I just wanna see your smile.【7/8】 ページ17

シリウスの教科書を覗き込んでみて、Aはちょっと驚いた。ところどころに手書きの書き込みがある。

 ありがたいことに、Aには馴染みのない難しい単語に、補足がしてある。「攪拌する」の箇所に「かき混ぜる」、「煮沸する」の箇所に「沸かす」といった具合に、簡単な単語を書き添えてあるのだ。

 普段は授業の前に教科書を読んで、わからない単語は辞書で調べておくAにとって、こういう書き込みはかなりありがたかった。

 シリウスが材料を取りに席を離れた隙に、好奇心に駆られて他のページもめくってみると、どこにも似たような書き込みがあった。それだけでなく、教科書の指示とは違う指示をメモしていることもあった。

 戻ってきたシリウスは薬草類を載せたトレイを二つ持っていて、片方をAの手に押し付けた。わざわざ二人分持って来てくれたのだ。

「あ、ありがとう……」

「ついでだ」

 ぶっきらぼうに言って、シリウスはほとんど教科書に目を向けることなく、下準備に取り掛かった。

 必要な材料も分量も、調合の仕方も、頭の中に入っているらしい。

 素直にAはシリウスを見直した。シリウス・ブラックといえば、成績は良いが、偉そうで素っ気ないイメージを持っていたのだが、意外と真面目に予習をするタイプのようだ。

 それに、教科書の補足のほとんどは、どう考えてもAのためとしか思えなかった。わざわざ簡単な単語に書き換える必要など、シリウスにはないだろう。

 教科書のどのページにも書かれていたということは、いつでも私に見せられるようにしておいたということ?

 魔法薬学で、Aがシリウスと同じクラスになったのは今年からだ。去年まで魔法薬学の授業はハッフルパフとレイブンクローの合同授業で、グリフィンドールとは別だった。O.W.L.試験が終わり、六年生からは魔法薬学を選択した生徒は全寮合同になったのだ。

 だからと言って、わざわざ教科書にこんな書き込みをする? そんなに労力をかける意味は何だろう?

 考えるほど、思い上がりのような気がして、Aは考えるのをやめた。少なくとも今は、授業に集中しなければならない。

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Helga(プロフ) - ハリネズミさん» コメントありがとうございます!嬉しいです。励みになります〜! (2020年5月10日 14時) (レス) id: 4936191a5f (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミ - 面白いです。更新楽しみにしてますー! (2020年5月7日 10時) (レス) id: 48ddc9040e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Helga | 作成日時:2020年5月1日 22時

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