人には人を、妖には妖を (ページ10)

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夢ページ10

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稀に夢を見る、鬼太郎にもうわしが必要ないと言われ突き放される夢を

そんなこと自分がいちばんわかってると言うのに

『親父、わしは今な、新しい家を探しているんじゃ』

「最近家を出ることが多いのはそれじゃったか、でも何故」

『お主らには、もうわしは必要ないと思ってな』

鬼太郎には実の父親もいる、そして昔は赤子でなにも出来なかった子が今では人間を救う側になった

この子はもう充分強くなった、わしがおらずとももう生きていける

『わしは確かにお主らを愛している、心の底からな。
じゃが鬼太郎はどうか、実の母親でもないわしを本物の家族のように愛せると言うのか、

今じゃわしはただの居候じゃろうに、早くこの家を出た方がよかろう』

「九尾…」

親父の視線が心に刺さる、分かっているさ自分でも

辛くなるくらいならこんな選択しない方がいい、そんなことわかっている

『安心せい、なにも縁を切ろうとしてるわけじゃない
ただ、母親を辞めようってだけじゃ』

形だけの母親なんて、そんなの嫌だったんじゃよ

「なぜ、そんなことを」

眠っていたはずの鬼太郎が起きてきた

『鬼太郎？すまぬ、起こしてしもうたか』

「いや…」

『安心せい、わしらももう寝る
そら、もう一度横になって…』

「九尾は出ていくのか？」

失敗した、そう思った

別れるその日までこの思いを鬼太郎に知られたくはなかった

『…まだ先の話じゃ、お主もわしがおらんほうがよかろう？』

「そんなこと、一度も思ったことない」

『しかしな鬼太郎、わしはお主の母親では無い、ましてや別種の妖怪じゃ』

「それでも貴方は僕を育ててくれた」

『しかしな鬼太郎、』

「僕はあなたに出ていって欲しくない」

まだ眠いのか、わしに体を預けてきた

「貴方は九尾の狐で、僕は幽霊族だ
けど生まれた時から貴方はずっと僕の母親で、家族だ」

『鬼太郎…』

「父さんも、九尾も、みんな僕の大切な…」

『もうよい、わかった。
今夜は共に寝よう、愛しい我が子よ』

昔のように抱きしめ、髪をサラリと撫でれば気持ちよさそうに目を閉じ、静かに寝息を立て始めた

「…九尾や」

『分かっておる、この子が望むなら、わしはなんでもいいんじゃよ』

もうしばらくは離れられそうにないこの温もりを、ただひたすら尊いと思えた