人には人を、妖には妖を (ページ9)

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運命ページ9

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『わしは、お主らとの出会いを運命と思っている』

「いきなりなんじゃ？」

鬼太郎が寝静まった頃、晩酌をしながら親父とそんなことを話した

『わしは、今もアイツを愛している
だがアイツにはお前という旦那がいた、それもまた運命だった』

「我が妻は美しいからのぉ。惚れるのも仕方ない」

『あぁ、愛していたとも』

初めて親父たちと会ったのはもう何百年と前、

妖術も上手く使えなかったわしが元の狐の姿でさまよっていた所、親父がわしを夕餉のキツネ鍋にしようと捕らえられたところから始まった

出会いは最悪だったが、それも運命だったと今では思う

『アイツは…岩子は、今まで見てきた生き物の中で誰よりも美しい心を持っておった。そんな岩子に惚れた』

「キツネ鍋にする予定だった狐がわしの妻に手を出そうとしたときは流石に怒ったのぉ」

『若気の至りじゃよ。あれが初恋で、それで最後の恋じゃ』

同族は嫌いだ、狐の妖怪にろくな奴はおらん

人間も妖怪も好きでは無い、互いを敵視しているが結局皆自分のことしか考えていない。根本的な部分は人間も妖怪も昔から変わらない

「お主も愛が分からないか？」

『いいや、それは違う

愛はお主らと、鬼太郎と…それからみんなに教えてもらった』

静かに寝ている鬼太郎の髪をさらっと撫でた
愛した人の遺伝を継いだ、綺麗な茶色のふわふわの髪

『わしは、自分が思ってるよりお主らを愛している
それはもう家族のように、自分より大切なものを見つけた』

「…かわったのぉ、九尾」

『運命の出会いのおかげじゃよ』

お酒に反射する月をくるりと混ぜるようにお猪口を回す

一気に飲み込めば、いつの日か飲んだ酒の味を思い出した