人には人を、妖には妖を (ページ8)

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今際の際ページ8

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＿＿＿＿数十年前、水木家

チリンっと鈴の音がなったかと思えば、座敷で寝ていた男の横に綺麗な金色の毛を靡かせた狐が現れた

「これは、神様の迎えかな」

『わしじゃよ、水木』

「Aか」

初めて会った時のような活気は無く、今は床に伏すことしか出来なくなっていた男

狐は人の姿へと変わり、男に近づいた

『お主、死相が出ておる、このままならばもう時期死ぬな』

「ははっ、お前ら2人揃って同じこと言うんだな」

『死ぬのか、水木』

「死ぬよ、俺は」

『死ぬな水木
鬼太郎は元気に育っておる、親父は変わらないが未だにお主との日々を懐かしそうに話すんじゃ

お主は、お主は死ぬべきでは無い、わしならお主を…』

頭に微かな温もりを感じた、昔のように逞しい手ではないものの、昔から変わらない温かい手が九尾の頭を撫でた

「随分、感情を出すようになったんだな
きっと素敵なやつらに出会ったんだろ」

『水木、話を逸らすな』

「俺はなA、人間として生涯を終える
意地汚く生きてきた、最後くらい人間らしく終わりたいんだ

どうせ俺は戦地で人を山ほど葬った、今更天国に行けるとは思ってないよ。地獄なら、お前らが来てくれる」

だんだん力が入らなくなっていったのか頭を撫でていた手がするりと落ちそうになる

その手を掴み、力強く握った。確かに温もりはあるが少しずつ体温が下がっていくのが分かる

『水木、いやじゃ…』

「…お前が泣いてるとこ、初めて見たかも」

『水木…みずきっ…』

「…お前は、良い母親だったよ」

握っていた手が、いよいよ温もりを感じなくなった

『…さよならは言わぬぞ、2人が悲しむ』

「わかってるさ…

ありがとうな、A」

眠ってしまった彼の手をずっと握りしめたまま独り、ただひたすらに涙を流すことしかできなかった

男の今際の際には、一匹の九尾だけだった