人には人を、妖には妖を (ページ6)

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春の夜ページ6

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夜中に目が覚めた

季節は春、夜はまだ少し冷えるというのに身体中が嫌な汗でびっしょりとしていた

夢を見た、遠いあの日の記憶の夢を、

少し離れたところで眠る親子を見て安堵する

『…散歩に行くか』

もう寝付くことは無いだろうと思い、長い夜の森を歩くことにした

春風により、草木は付け始めたばかりの葉を揺らしている
轟々と蠢く大地に心地良さを感じた

『春、春か、』

春と言えばあれだな、ほら、あの花、

昔は好きだったのだがどうもあの一件以来あまり好かなくなってしまった

ふと、顔の横を桃色のものが通り過ぎて行くのが見えた

パッと振り向けば、夜空に浮かぶ月に照らされた美しく、そしてどこまても不気味な大きな桜の木が姿を現した

今でも思い出すあの者の影を、

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『お主らには、

お主らだけには、幸せに生きて欲しいんだ…！』

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あの願いも、今となっては叶わぬ願いとなってしまった

あの日の紅く染まった桜は一生忘れられない
気づけばわしの呪いとなっていた

『…嫌になるのぉ』