二十六話 答えの出ない感情 ページ27
ルッチside
涙を流しながら倒れ込むAを片手で受け止め、ベッドへ運んだ。
口に仕込んでおいた強力な睡眠薬をAに飲ました。
おそらくAは火拳のエースを追おうとするだろう。
それでは助けた意味がない。
ある街でAらしき女の情報を手に入れた俺はすぐさまその場所へ向かった。
後は簡単だった。
何も情報が入ってこなかったこの5年間に比べたら容易かった。
やっと見つけたんだ、逃すわけがない。
上手く隠れたものだ。
だが、なぜ出てきた?
大人しくしていたらよかったものを。
まぁ、そんなことは重要ではない。
俺はすやすやと眠るAに視線をやる。
ーー『私を殺しに来たの?』
美しい容姿だが、触れると壊れてしまいそうな女。
それがAの第一印象だった。
上から聞かされていたような恐らい力を持った女には見えなかった。
ーー『貴方も大変だね。遥々ご命令で私を探し回ったんでしょ?ガッカリした?期待はずれの弱そうな小娘で』
笑っているが何処か悲しそうなAの姿に、俺はこの女がターゲットなのだとわかった。
ーー『Aっていうの、私。貴方は?』
ーー『ねぇ、聞かせてよ。政府のお偉いさん達は私のことどうやって話してるの?世界を滅ぼす力を持った悪魔とか?』
ーー『そうだよね…でもね、ルッチがわざわざ手を汚さなくても私は勝手に死ぬの。そういう悪魔の実の能力者なんだー私。政府が危険視してる力とは別なんだけどね。だから安心して』
壊れそうな繊細な笑顔を俺に向け、去っていく後ろ姿を、俺は追いかけなかった。
上にはAを始末したと報告した。
何故そんなことをしたのか、自分でもわからなかった。
あの時のAの目に、嘘はなかった。
本気でどうでもいいという目をしていた。
それなのにAはまた戻ってきた。
何がAをそこまでさせたのか、俺はあらゆる手段を駆使して調べ上げた。
ル「微かな希望でも見ているのか?A」
癖のある金髪を一束手にとる。
規則正しく呼吸を繰り返し眠るAは、たしかに生きているが、死んでいるかのように感じさせる。
俺は扉の方へ向かい、取っ手に手をかけた。
上にはAのことを話していない。
話せば世界中がAの敵になるだろう。
俺は何故Aを死なせたくないのか分からない。
一度話しただけの女だ。
なのに何故……
俺はAのいる部屋を後にし、別の任務へ向かった。
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もえぎ(プロフ) - コメントありがとうございます!複雑なストーリーとなっていますので最終的にどうなるかはまだはっきりしていませんが、その可能性は大きいです! (2023年4月23日 21時) (レス) id: 5993720d1e (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - この小説はトラファルガーローオチですか? (2023年4月23日 19時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
もえぎ(プロフ) - ご指摘ありがとうございます!気づかなかったので助かりました! (2023年2月5日 12時) (レス) id: 5993720d1e (このIDを非表示/違反報告)
金成(プロフ) - お/り/ふ;らたってますよ (2023年2月5日 10時) (レス) id: 6328f81305 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - オリ‘フラ立ってますよ! (2023年2月5日 9時) (レス) @page1 id: 40f7098858 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もえぎ | 作成日時:2023年1月16日 0時