【ONE PIECE】運命に抗って (ページ36)

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三十五話　家族ページ36

空を鼠色のぶ厚い雲が覆う。

ド「よぉ」

『ッ！また来たんですか！？せめて窓からじゃなくて正面から来てくださいって何度も言ってるじゃないですか！』

初めてAに出会ってから、もう一か月が過ぎていた。

あれから俺は毎日Aの部屋を訪れた。

Aは口ではこう言っているが、俺が来るのを心待ちにしてくれているのがわかっていた。

ド「フフフッ、つれねぇ奴だなぁ、オマエが部屋から自由に出れねぇから俺が毎日足を運んでやってるのによぉ？」

『別に頼んでません！』

ド「そうぷりぷりするな。可愛い顔が台無しだぜ？」

俺がそう言えば、耳まで真っ赤にして恥ずかしそうな顔をする。

この一か月でAのことをたくさん知った。

初めて会った時の凛として、真っ直ぐで折れない、闇の世界には不釣り合いな奴という印象は変わらない。

関わって行く中でも、Aは何処までも綺麗な奴だった。

表情がコロコロ変わって面白れぇし、揶揄うとすぐ顔を赤らめる。

ただの興味だったはずが、俺はAにどうしようもなく惹かれてしまった。

ド「A」

欲しい。

どうしようもなくAが欲しかった。

ド「俺のファミリーにならねぇか？」

『え…ファミリーって…』

ド「そのままの意味だ。俺はオマエを家族に迎えたい」

するとAの青い目から大粒の涙がぼろぼろと溢れてきた。

ド「！？どうしたA」

『ッ…ごめんなさい…家族だなんて初めて言われたから…すごく…嬉しくてッ…』

泣きながら幸せそうに笑う彼女が愛おしかった。

だがAの表情はすぐに暗くなった。

『でも、いけません。私はここから逃げられない』

外ではポツポツと雨が降り出していた。