二十三話 どす黒い感情 ページ24
ドフラミンゴside
家に着いた頃にはAは寝ていた。
コラソンから事情を聞いたのだろう、ファミリー総出で迎えられた。
Aの怪我に皆一瞬顔を顰めたが、すやすや眠るAの寝顔を見て、命に別状がなかったことを喜んだ。
Aを横にさせようと思ったが、ワンピースに血がついたままではどうかと思い、彼女の服に手をかけた。
だが、無防備に眠る彼女を着替えさせるのは、抑えが効かなくなるだろうと思ってやめた。
Aをそっと俺のベッドに下ろすと、美しい黒髪が扇子のように広がり、綺麗だった。
ド「A」
まだ目尻に浮かぶ涙を優しく指で掬った。
ド「愛している、A」
Aに出会ったあの時から、俺の心はオマエに囚われている。
だが、これは恋や愛といった美しい感情には程遠い。
A、オマエは夢にも思ってないだろう。
オマエがコラソンと話しているのを見るたび、アイツを殺したくなる。
実の弟なのにだ。
いっそオマエを誰の目にも届かないように俺の側にだけ置いていたいとさえ思った。
俺はAの小さく開いた形の良い唇を撫でる。
『…んっ…』
くすぐったいのか、可愛い声を出す。
本当は今すぐにでもオマエを俺のものにしてしまいたい。
だが、何よりも綺麗なオマエに、俺は昔から触れるに躊躇した。
多くの命を奪い、金に汚れたこの手で、オマエを汚したくなかった。
A、底抜けにお人好しなオマエに、ここは暗すぎるだろう。
オマエはここにいるべきではない。
それでも、俺はオマエを手放せない。
なぁ、A、それでもオマエは俺を受け入れてくれるのか？
俺はAの前髪を避けて、額にそっとキスを落とした。
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作者名：もえぎ | 作成日時：2022年11月3日 19時
