十九話 泣き虫 ページ20
コ「A！A！しっかりしろ！」
見るとロシィは無傷のようだ。
実際ではロシィが助けに来てくれて、すぐに私は動くことが出来なかった。
泣き止まない私の側にロシィはいてくれた。
でも、そのせいで背後からロシィが刺されてしまった。
私がもたもたせずに早くこの場を去っていれば、ロシィは刺されずに済んだのにって何度も後悔した。
今、刺されたのは私で、ロシィは怪我をしていない。
『…っ大丈夫よコラソン、少し掠っただけ。』
ロシィを心配させないようにと、脇腹を押さえながらゆっくり立ち上がるが、切られた所が焼けるように熱い。
でも、まだ私は終われない。
ロシィへの襲撃は回避した。
まだもう一つ、防がなければならないことがある。
『ロシィ、悪いけど外に行くのに手を貸してくれないかしら…あまり歩けそうにないの』
コ「っ！すまねぇA！俺が不甲斐ねぇばっかりに！」
ロシィは泣きながら私をお姫様抱っこしてくれた。
『ふふふっ、貴方ってやっぱり泣き虫さんなのね』
そんなロシィの姿が、あの時の、雪の降るあの時の姿と重なって見えて、そっと貴方のくせっ毛を撫でた。
私のとは正反対の金色でふわふわした髪だった。
あの時も、本当はこうしてあげたかったけど、死んでしまってごめんなさいね。
コ「Aの前で泣いたのはこれが初めてだろ！大人しくしてろ、傷にさわる！」
泣きながら、私を気遣う貴方がとても愛おしい。
私はそっと目を瞑った。
今なら、ドフィがここへ来ても、倉庫内には気絶した男たちだけで、私はいない。
ドフィのことだ、男たちには目もくれずに私の方へ来てくれるはずだ。
もう、あの時みたいに、大勢の人を殺すドフィは見たくない。
ド「…A」
弱々しい声だが、たしかに聞こえたドフィの声に目を開ける。
港に肩で息をするドフィがいた。
汗だくで、私のために急いで来てくれたのだと分かった。
『ドフィ…ごめんなさい…私 ド「コラソン、Aを連れて帰れ。急いで手当てしろ」
『え…』
ドフィが近づいて来て、私の頬をそっと撫でる。
ド「痛かったなぁA。だが安心しろ、オマエを痛めつけた奴等は二度とオマエの前に現れねぇ。」
『…！ドフィ、行かないで！お願い…私の側にいて…！』
私は必死にドフィの手を握るが、難なく解かれ彼が倉庫の方へ歩いていく姿を眺めることしかできない。
ドフィの目は怒りに満ちていて、私を映していなかった。
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作者名：もえぎ | 作成日時：2022年11月3日 19時
