十七話 気づかないように ページ18
それからは何かとAと話す機会が増えた。
Aと話す時間は心地よかった。
Aの知らない海の向こうの話をしてやるとコロコロ表情を変えるところも、よく分からない所でツボって笑うところも、名残惜しそうに帰っていくところも、全て愛おしく感じた。
ド「A」
Aと話していると突然背後からドフィの声が聞こえて、肩がビクッと跳ねた。
『ドフィ！どうしたの？わざわざこんな所に…ド「A、すぐに俺の部屋に来い」
Aは俺のことを気にしているようだったが俺が頷くと、ドフィの元へ歩いて行った。
ドフィはAの肩を抱きながら帰っていった。
二人の後ろ姿に、胸の辺りが締め付けられるのを感じた。
薄々感じていた。
俺はいつの間にか、Aに惚れていた。
だが、この気持ちに気づかないようにしてきたはずだった。
Aはドフィのお気に入りだ。
そんな彼女を愛せば、お互い幸せになれないことは明確だった。
もう、彼女とはあまり関わらないようにしよう。
そう思い、自分の気持ちに蓋をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
懐かしい思い出だ。
それからは以前のようにAと会って話す機会は少なくなった。
それでも時々、ドフィの目を盗んで二人で会ったりした。
Aも俺も、近づきすぎないように、気をつけていたと思う。
もし手を伸ばしてしまえば、取り返しのつかないことになる。
そう思っていたから。
だから今朝、ドフィがいる前でAが抱きついて来た時、正直驚いた。
彼女の咄嗟の言い訳に、ファミリーは納得しているようだったが、ドフィは疑いの目で俺たちを見ていた。
食事の後、何か言われるかと思ったが、ドフィは俺に見向きもしなかった。
それが幸いだと思った。
「そこの背の高い人！買ってかないかい？」
見ると気前の良さそうな男が美味しそうな果物を売っていた。
Aへのお土産に丁度いいと思い、カゴに入る分だけ買った。
元来た道を戻りながら、彼女の嬉しそう顔を想像して自然と頬が緩む。
べ「コラさん！！」
ベビー5が血相を変えて俺の脚にしがみついてきた。
突然のことで危うくこけそうになったが、何とか耐えた。
べ「Aお姉様が！！殺されちゃう！！助けて！！」
その瞬間、持っていたカゴをベビー5に預け、走り出していた。
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作者名：もえぎ | 作成日時：2022年11月3日 19時
