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「意地でも取ったる！」
彼はそう言っているけど、普段クレーンゲームをしない私でも分かる。
このうさぎは掴みづらいフォルムだと。
「うわ！めっちゃ惜しい！」
100円玉を何枚も並べ、彼はクレーンゲームとにらめっこ。
彼がうさぎと格闘してる間、私は両替に行った。
あまりふたりで外に出ることも無いし、何より勇人がクレーンゲームをしてるということがレアで何となく不思議に感じる。
『ねぇ、もう帰ろう？買おうと思えばネットで買えるんだし…プレゼントは他に選べるから…無駄金になっちゃうよ』
「大丈夫！もうちょい、頑張らせて」
……諦めがホントに悪いんだから。
でもそんな彼の諦めが悪いところに優柔不断な私は、何度も何度も救われてきた。
私の中の彼への気持ちはずっと変わらない。
「うわっヤバい！ほらほら！」
『…え？あっ』
すとんっと機械の下の出口にぬいぐるみが落ちる。
勇人が拾い上げ、私にうさぎのぬいぐるみを手渡す。
「ほら取れた、無駄金じゃなかったやろ」
私になんか別にいいのに、きっと普通に買った方が安いのに、彼が一生懸命取ってくれたうさぎのぬいぐるみ。
『…ふふ……かわいいね、これ』
「あ、やっぱそれ好きなんやん、家に飾ってな」
『うん、帰ろっか』
「駅まで送るわ」
もう外は真っ暗になっていて、商店街の賑わいも減ってきていた。
どのくらいゲーセンにいたんだろうか。
私たちは商店街を来た時のように並んで歩く。
ただ表情はさっきよりもあたたかくて。
『……勇人』
「うん〜？」
『かわいいプレゼント、ありがとう』
「…どういたしまして、誕生日おめでとう」
《帰り道、ゲーセン》〜END〜
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作者名：いろは | 作成日時：2019年11月25日 10時
