獄都商人 (ページ24)

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にじゅうさんページ24

それから、私達はずっと話し込んでいた。私のいない間に獄都で起きたこと、ヨウくん、しのぶちゃん兄妹や、彼の｢家族｣について。私が1年かけて旅してきた蝦夷地と、そこの変わった食べ物と植物について。抹本に頼まれていた薬草を手に入れるための軽い冒険。

ずっと食堂の一角を占領し続けたにも関わらず。快く(二口は文句を言っていたが)湯呑みを貸し出してくれたあやこに感謝しつつ、飲んでいたお茶の3杯目が尽きた頃、食堂の扉が開く音がした。

｢待たせたか、すまない｣

と言いながら食堂に入ってきたのは、私の待ち人、斬島だった。

｢いえ｣

と言って、私は荷物を持って立ち上がる。団子少年に挨拶をして別れようとすると、

｢…朔夜、か？｣
｢うん、久しぶりだね、青い目のお兄さん！｣

と、言って、食いしん坊2人は二人の団子世界に入ってしまった。

…知り合いと知り合いが知り合いだったりすると奇妙に嬉しくなってしまうのは、何故だろうか。団子少年に獄卒の知り合いが居るというのは意外だが、性格を考えれば、このふたりは仲良くなれそうだな、とも思う。

途中で、不意に気がついたように斬島が団子少年に
｢お前は…｣
と何かを聞こうとしたが、その直後にどどどどっと足音がして、特務室一騒がしい獄卒が食堂に飛び込んできた。

｢朔夜ーー！お、斬島と代々木もいる｣
｢あれ、平腹？そんで後ろのは…｣

…田噛が引き摺られてきている。ちょっと笑ってしまった。

団子少年とその他獄卒達はわちゃわちゃと話し始めた。何だか、知り合ったのは最近のようなのに、すっかり仲良くなっている。口を聞いてもらえるようになるまで3年はかかった私とは、だいぶ違うではないかと、口を尖らせてみる。

団子少年には、人を惹きつける力があるのか。それとも、警戒を解くような力を持つのか。なんにせよ、仲がいいのは良い事だ。

つんつんと斬島をつつくと、彼は飴を頬張ったまま振り返る。私は微かに笑って、カナキリを手渡した。もごもごと斬島が礼を述べているのを後目に、私は食堂を出た。

｢飴、もう一個食べよっかな｣

団子少年の大きめの独り言が聞こえた。

誰にも何も言わずに食堂を出たけど、呼び止める声はしなかった。