32話 中島side ページ32
イルカショーが始まったというのに、なぜかキョロキョロと落ち着かない涼介くん。
ショーが終わり、涼介くんの隣の人が立ったと思ったら
「Aさん?」
え?
見ると、いつかの女の人。涼介くんが知らない人に話しかけるところなんて初めて見た。
「え、あ、ども。」
戸惑いがちに挨拶する彼女に、涼介くんは続ける。
「Aさんもいるかさん見に来たの?」
「え、あ、そうだよ。」
なんか、さっき涼介くんを引き渡してくれた彼女とは明らかに雰囲気が違っている。
「ねぇ、Aさん。それなあに?」
「え、あ、これ、えっと、マンボウ...」
「マンボウ?マンボウって食べられるの?」
「いや、あの、カステラで、ここに来ると絶対買うんです。」
へぇー、知らなかったな。涼介くんが落ち着かなかったのはこのせいかな。
「りょ、涼介くんもた、べる?」
「いい?ゆうとさん。」
「いいんですか。」
「もう冷めてるんですけど。」
「すいません、ありがとうございます。」
「ありがとうございます。」
「どぞ。」
お言葉に甘えて俺も一つ手に取った。
「ん!あまーい、おいしー」
ふんわり柔らかいカステラにとろりとしたチョコレート。ザクッとする砂糖の塊もまた美味しい。
「美味しいね。帰りに買って帰ろうか。」
「ほんと?やった!」
ぴょんぴょん飛んで喜ぶ涼介くん。可愛い。
「良かったです。」
ふわりと笑ったAさんに胸が鳴ったのはここだけの秘密。
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作者名:はばねろ | 作者ホームページ:http://uranainovel@havanero
作成日時:2017年3月11日 9時