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44階は、近衛騎士副長と円卓の騎士の執務室が中心となっている階層だ。故に川端の執務室も一応あるのだが、使う機会には六年前以降恵まれていない。寧ろ、ポートマフィアでの執務室の方が長く使っている位だ。
その中の最奥、近衛騎士副長の執務室前に辿り着き、木目の美しい深い色合いの扉を叩く。未だ歳若い彼の返答が聞こえる。
「川端です。中間報告に参りました」
「どうぞ、入って頂戴」
「失礼します」
許可を得てから扉を開け、後ろ手に閉める。この部屋の主はマホガニーの執務机に向かい、山積みになった書類と格闘していた。
ルイス・キャロル。弱冠14歳にして、円卓の騎士の中の最上位、アガサ・クリスティに次ぐ組織のNo.2である近衛騎士副長を務める鬼才の持ち主である。その実力は確かなものであり、川端も認めているところだ。
女性物の服を着てはいるが、正真正銘の男である。似合っているし、身近に同じ様な服装をしている養い子がいる為、川端にその辺の偏見は無い。
手元の書類から顔を上げたキャロルは、川端の姿を認めて目元を和らげた。
「何時もスパイお疲れ様。大変でしょう。向こうの首領の相手とか、『重力遣い』の補佐とか」
「ええ、まあ……気苦労は絶えませんね……。ですが、少しでも組織に貢献出来るのなら、本望ですよ……」
「気持ちは嬉しいけど、無茶は程々にして頂戴ね? 胃薬は要るかしら?」
「結構です……もう持っていますから」
「あら、手遅れだったのね」
苦笑するキャロルに近付き、机の上にUSBメモリを滑らせる。数ヶ月間で耳にした、或いは調べ上げた情報を記録したものだ。構成員の異能情報もあるが、首領のものに関しては詳細が判らず未だ曖昧な儘だ。勿論、緊急性の高いものは養い子を通じて報告済みの為、急ぐ必要の無い情報ばかりなのだが。
受け取って鍵付きの抽斗に仕舞うキャロルは、これから如何するの、と訊ねる。
「取り敢えず、自分の執務室を見に行こうかと……その後は、養い子の様子見に」
「そう。クリス、寂しがってたわよ? 私に話す内容も貴方の事が大半だったし、その後明らかに落ち込んだ目になるし」
「ええ……判っては、いるんですが……」
黙りこくった川端に、キャロルは仕方無いと云う様に笑う。何をすれば善いのかと惑う子供を諭す親の様だった。
「暫く此方にいるんでしょう? 沢山お話してあげて。それだけでも、結構嬉しいものよ」
川端は上司の助言に頭を下げ、執務室を後にした。
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名無しのチート(プロフ) - アカツキさん» ありがとうございます!(*´ω`*)ムシャムシャ← (2020年5月15日 22時) (レス) id: 6216eeef7c (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 名無しのチートさん» いえいえ、こちらこそ素敵な子達をお貸し頂いてありがとうございました! こんな拙い文章力で良ければ……( *・_・*)っ【文章力の欠片】 (2020年5月15日 22時) (レス) id: 5ad838b917 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのチート(プロフ) - ありがとうございますっっ!!(文才力が欲しい...!)どんどんうちの子達使っちゃってください! (2020年5月15日 22時) (レス) id: 6216eeef7c (このIDを非表示/違反報告)
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