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どれ程時間が経っただろうか。体感としては数時間にも及んだ気分だが、実際には一時間弱程度だった。何故こんなにも疲れているのかと云えば、当然の様にダーレスの所為で。
「ねぇねぇアンちゃん、聞いてるぅ? あの人すっごく面白そうじゃない!? 狂気に堕ちてくれたらとっても素敵だと思うんだぁ! ねぇ、アンちゃんもそう思わない!?」「ねぇねぇアンちゃん、黙ってて詰まんなくないの? お話しようよぉ! ボク退屈だよぉ!」エトセトラ。
並んでいる時に半ば喚く様に云うダーレスに、アンデルセンは適度に返答し、適度に無視しながら胃の安全を守っていた。
そんな苦労する時間も終わり、漸く店内に入る事が出来た。女性受けしそうなお洒落な店内の、二人がけの席に案内される。窓から離れているが、どうせモールの中なのだから景色など気にしない。
草臥れた足を休ませながらメニューを開く。ダーレスも一緒に覗き込んでくる。
「アンちゃんどれにする? ボク、これが食べたいんだけど!」
「んー……じゃあ、ぼくはこっちかな。どうせ、また残った分は僕が食べるんでしょ?」
「うんっ! よろしくねぇ!」
悪びれもせずに肯くダーレス。アンデルセンと出掛ける時、甘い物を食べたがる癖に、何時も彼は半分近くを残してしまう。単純に胃が量を受け付けないのだと云う。一度、アンデルセンに心配させまいと頑張り過ぎたダーレスが、限界を超えて戻した事がある。あんな事をさせるくらいなら、見逃した方がマシだろう。
ベルで店員を呼び、注文を告げる。女性店員はにこやかに肯き、カウンターに戻っていった。
と云うか、男二人でこんな店に来ている事に誰も突っ込まないのが悲しい。男として見られていない。アンデルセンは女性物の服だから兎も角、ダーレスもか。何だか似たものを感じ同情しかけたが、彼がそんな事を気にする訳がなかったと思い直す。
「それにしてもさ、アンちゃんはよくそんないっぱい食べられるよねぇ。何で何で? 躰の作りが違うの?」
「或る意味違うんじゃない? ダーレスくんは胃が普通より小さくて、ぼくは普通より少し大きいんだと思うよ。まあ、ぼくのは甘い物限定だけど」
「変な躰だねぇ!」
何の躊躇いも無く云い切られ、悪意が無いと判っているから叱れない。ダーレスは無意識の内に、的確にアンデルセンの弱い所を突いていた。
▼→←Let's Go Shopping II【H・C・アンデルセン】
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名無しのチート(プロフ) - アカツキさん» ありがとうございます!(*´ω`*)ムシャムシャ← (2020年5月15日 22時) (レス) id: 6216eeef7c (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ(プロフ) - 名無しのチートさん» いえいえ、こちらこそ素敵な子達をお貸し頂いてありがとうございました! こんな拙い文章力で良ければ……( *・_・*)っ【文章力の欠片】 (2020年5月15日 22時) (レス) id: 5ad838b917 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのチート(プロフ) - ありがとうございますっっ!!(文才力が欲しい...!)どんどんうちの子達使っちゃってください! (2020年5月15日 22時) (レス) id: 6216eeef7c (このIDを非表示/違反報告)
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