時計の針が示す先【CS/派生作品】 (ページ44)

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「ねぇ、お兄さん達。雪は好き……？」

背後から声を掛けられた構成員は慌てて振り向き、何故子供がいるのかと怪訝そうに眉を顰める。他の構成員も釣られて少年を見た。

「雪国は好き……？温泉のある街は……温かな街は、好き？」

「ンだよ、この餓鬼。何処から紛れ込んだ？」

「始末しちまうか？」

「否、でも、構成員の誰かの餓鬼だったら如何すんだよ」

何やらぼそぼそと話し合う構成員。少年はふうと息を吐き、面倒気に眉根を寄せる。

「異能力──『雪国』」

ぶわりと、少年を中心に広がった蒼銀色の文字の羅列に、構成員達が目を剥く。その組織は異能力者を有しているが、あくまで上層部のみの話。下っ端の構成員にはその事を知らされてすらいない。丸っきり無知なのだ。

少年と目の合った構成員が消える。他の構成員とも順番に目を合わせ、異能空間に引き摺り込む。部屋中の人間、凡そ30人を“雪国”に放り込むと、少年は部屋の鍵を掛け、ソファに座って欠伸をする。

目を閉じて、意識だけを“雪国”に飛ばす。放り込んだ構成員の数だけ複製された異能空間の中で、黒スーツの構成員達が孤独で抗っていた。真面な救いなど初めから用意していない少年は、その滑稽な姿に口唇を歪める。

最初に死んだ構成員は、雪に隠れて見えなくなった為か、線路から外れて狼に喰われた。
次の構成員は、線路上で熊に頭を潰されて死んだ。
その次は、寒さに弱いのか直ぐに動く事が覚束無くなり、白の中に倒れ伏して動かなくなった。

次々と死んでいく哀れな構成員達に、少年はふわりと欠伸をしてソファに寝転ぶ。
異能空間の時間の流れは現実世界の500倍。15分もあれば、“雪国”では五日が経つ。それだけ待てば、確実に全員死ぬだろう。

然し、それでは余りにも詰まらない。うっかり寝てしまって、その間に殺されるのも厭だ。一瞬思案して、自分自身も適当な“雪国”に入った。