時計の針が示す先【CS/派生作品】 (ページ40)

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「何でアンちゃんそんなに女の子の服が似合うのぉ!? ボクもうアンちゃんの性別わかんなくなりそう！て云うかわかんない！」

「えぇ……」

「あっそうだ！次これね！」

そう云ってまた服を押し付けられる。ジトーっとダーレスを睨んでみるも、彼はにこにこと笑って取り合わない。毎回折れるのはアンデルセンの方だ。

再びカーテンを締め、手早く渡された服に着替える。今回はワンピースでは無い為、少し時間が掛かった。

シャッ、と勢い良くカーテンを引く。予想はしていたが、ダーレスはまたきゃあきゃあと騒ぎ出した。

今回着たのは、黒に白の二重ラインが入った襟に紺のリボンタイのセーラー風のブラウスと、ベルトで吊る型の藍色の膝丈スカートだ。スカートの裾には白で繊細な模様が描かれている。スノーホワイトの髪に宝石の様なオッドアイである事も合わさって、何処ぞのお嬢様の様な雰囲気を纏っていた。

「アンちゃん、すっごくお嬢様みたい！可愛いが過ぎるよぉ！それで外出ちゃダメだね！悪い虫が寄って集って気持ち悪い事になっちゃう！」

「ねぇ、もう出ても善い？」

「善くないよ！まだまだ着て欲しいのがいっぱいあるんだからぁ！」

そう云って、籠に放り込まれた沢山の服を掲げて見せるダーレス。ひくりと頬を引き攣らせ、アンデルセンは逃げ出したくなる己の躰を抑え込んだ。逃げたら確実に後が面倒だ。

ふと周囲の客に目をやると、突如始まったダーレスによる着せ替え人形に目を輝かせ、写真を撮ろうとする者も幾人か見られた。これで自分が男だとバレたら如何なる事やら。背筋がゾッと冷えた気がした。

「はいっ！じゃあ次はこれね！」

「……もう、如何にでもなれ……」

自棄になったアンデルセンは、差し出された服を引っ掴んで試着室に篭った。その間にダーレスが周りの客に何やら話しているのが聞こえた。絶対善い事では無い。アンデルセンの面倒事センサーが反応している。どうせ、撮影許可を出す代わりにSNSへの投稿は禁止だとか、着せたい服を持ってこいだとか、そんな事だろう。

逃げ出したいと叫ぶ本能を、ダーレスに付き合ってやれと理性が抑え込む。自分でも何が何だか判らない程度には混沌としていたが、着せ替え人形になる覚悟を決めて、カーテンを開いた。