時計の針が示す先【CS/派生作品】 (ページ27)

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ダーレスはあくまで部外者であり、本来ならポートマフィアの敵である。そんな人物を殲滅作戦に連れていくのは、これ迄着々と稼いできた川端の評価と信頼を下げる結果になりかねない。

けれど、川端は何処かダーレスに対して甘くなってしまう節があった。

「……黒服の一人に頼んでみる。其奴に変身して、紛れ込んで。異能は使っちゃ駄目だよ。バレてしまうから……」

「えぇぇ……ショックだなぁ、異能力使えないんだぁ……まあしょうがないや。判ったよ」

こくりと肯いたダーレスを見ながら、手元のカップに口を付ける。温かい甘さのミルクティーが口と喉を潤す。

ダーレスが殲滅作戦を見たがるのは、川端の異能力見たさの為だろう。
そもそも、川端達──つまり中原の人員が動かされるとは限らないのだ。否、八割以上の確率で自分達に指令が来るだろうが、確信は出来ない。それなのに態々頼みに来るとは、一体何処迄あの異能を気に行ったのやら。

ダーレスは街に買い物をしに行くから、と云って先に喫茶店を出た。現在は一人で穏やかな空気を楽しんでいる。

(……休暇、残り二日分は返還しよう……)

明日は出社して、中原に報告。その後首領に報告して、恐らく自分達に殲滅命令が下る。そうしたら、中原と共に作戦の立案──と云うより、川端が立てた作戦を中原が確認する──をし、部下に伝達。決行日前日にダーレスに連絡。

情報に確証を持たせる為、これから休日であるにも関わらず馴染みの情報屋で買い物をし、自宅で組織の筐体(コンピュータ)にハッキングをしなくてはならない。

嗚呼、面倒だ。心底面倒だ。
然し、それでもすべき事を投げ出す訳にはいかない。無駄に気苦労の多い立ち位置ではあるが、嫌っている訳でもないのだから。疾うに腹は括っている。

温くなったミルクティーを喉奥に流し込んで、席を立つ。懐から携帯を取り出し、情報屋に連絡をつける。
今どき珍しい和服姿に幾人かの目線が向いたが、無視して会計を済ませる。気にしたら負けだと学んだからだ。

からんころん、とドアベルが鳴る。
かつん、と踵で地を叩いて、川端は喧騒の中に紛れ込んだ。