八大悪女 - 銀花の君 ページ14
銀花の君
「どうやら民は“銀花の君”をご所望らしい」
本名の記述は控えておく。
白髪で蒼い眼をしている。その名前の由来となった銀の花の髪飾りを身に付けているのが特徴。他の精霊と一線を画す非常に美しい外見を持ち、非常に強力な魔法を操り、世界一の魔法使いと呼ばれている。
他国で言う「国王」の様な存在であるが、氷雪の国の人々からは「銀花の君」とあたかも神のように呼ばれ崇められている。
一見すると善良な存在に見えるが、内実はその様ではないらしい。
かつて幼かった彼女はその圧倒的な美しさと格段な魔力を以て、その国では誰からも尊敬されていた。しかし彼女自身は孤独だった。
彼女には確かに彼女を崇め奉る国民と、唯一の血を分けた妹はいたが、彼女が求めるものとは違ったらしい。
彼女を頼ってばかりいて、誰一人として“彼女”のことを見てはいなかった。
最初こそ、彼女は人々の期待に添えるよう、その力を以て国を治めていた。その強大な力をもってすれば願いを叶えるなど容易いことだった。
だが時が経つにつれて彼女にある疑問が生まれた。
何故私が他者のために生きねばならないのか、何故皆は私を頼るばかりなのか、私は何なのか。
悠久の時を生きる彼女にとって悩む時間なぞ無限と言って良いほどに有った。
そして彼女は悟った。どうすれば自身が悩まずとも良いのかを。
彼女を求めた者達全員、否、世界を氷漬けにして自分の城で永遠とも思えるような長い時間を過ごした。
そしてその永遠とも言える時間を過ごし、その悩みが消え去った時、彼女は「偶像」へと姿を変えた。
氷は恵みをもたらした。雨を降らし、稔りを豊かに。人々は知らない、自身が真逆氷漬けにされていたなんて。
そして彼女は再び「銀花の君」へと姿を変えた。もう彼女はその姿に悩みを抱くことはないだろう。
現在、当時の事実を知る者は残っていない。…彼女とその妹を除けば。
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作成日時:2023年11月30日 13時