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イタリアに来て3ヶ月間。
出られたショーはわずかに2つ。
それ以外は練習、練習、練習。
私は日本で一体何を学んできたんだろう。
表現力が足りない。
動きがよくない。
ウォーキングの技術が足りない。
毎日のダメ出しに
心が折れそうになる。
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・
「モデルに一番重要なのは自信」
日本にいるときに恩師に言われた言葉。
私が一番素敵。
私が一番きれい。
そうやって頑張ってきたけど
本当の私は人見知りで引っ込み思案。
こんな自分がパリコレに行くなんて
本当に叶うんだろうか。
・
・
今日も早くからレッスンに行く予定だった。
事務所まではトラムに乗って5駅。
いつものように駅に向かうと
いつもとは違う人だかりができている。
『何かあったんですか?』
近くに立っていた男性に聞くと
『今日はストライキで動かないってさ』
と諦めきった声が返ってきた。
TAXIを拾っていこうか。
それとも近くまでバスで行って歩こうか。
考えているうちにどうでもよくなってきて
ふらふらと歩きまわっているうちに
高速バスの乗り場にたどり着いた。
もう、逃げ出してしまいたい。
心に浮かんだ気持ちに従って
チケット売り場に並ぶ。
行先は特に決めていなかった。
とにかく遠くへ行きたかった。
自分の順番になって
適当に時刻表を指さしてチケットを買う。
『往復にしとくかい?』
『いいえ、片道で』
売り場のおじさんは
不審な顔をしながらも会計を済ませてくれた。
緊張から解放されたせいか
バスではぐっすり眠ってしまった。
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作者名:Haruka. | 作成日時:2019年11月10日 20時