HERO【石川祐希】 (ページ47)

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047　Yuki　Side ページ47

ゆっくりと会場が暗くなって
次第に音楽が大きくなる。

いよいよクライマックスというとき
音楽に合わせて奇抜な衣装に身を包んだモデルが
ランウェイの上に現れた。

まるで会場全てを飲み込むような
独特の存在感を放つモデル。

俺もプロの世界で戦ってきて
刺すような鋭い存在感や
視線で圧倒するような選手を
何人も見てきた。

そんな人たちを思い出させる。

そこにいる全ての人を
そのモデルの世界観に引き込んで行く。

俺にはウォーキングの上手さも
服の見せ方もわからない。

わからないけど
このモデルのすごさは十分にわかった。

モデルがまっすぐ歩いてきて
正面でポーズを決める。

そのときになってようやくわかった。
あれはAちゃんだ。
何で気づかなかったんだろう。
それくらいAちゃんは役になりきっていた。
「あの服を着ている人」になりきっていた。
普段とは全く違う空気をまとっていた。

正面でターンしてランウェイを帰って行くときも
俺の視線は
というよりもみんなの視線は
次に出てきたモデルではなく
Aちゃんの背中に釘付けだった。

それほどまでに他を圧倒していた。

衣装を変えて出てきた時も
最初とは全く違った雰囲気で
周りでも息をのむのが聞こえる。

すごい。
正直、ここまでだとは思ってなかった。

気づけばショーは終わりを迎えて
俺は夢中で拍手を送っていた。

最後の一瞬、
ランウェイの上のAちゃんと目があった気がした。