HERO【石川祐希】 (ページ5)

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「モデル」って言うと
周りからは華やかな職業だって言われる。

確かにそういう部分もある。
素敵な服を着て、奇抜なヘアメイクで
スポットライトの下を堂々と歩く。

それでお金がもらえるんだから
楽してお金を稼いでるっていう人もいる。

でもそんな人たちは
私たちがどれだけ努力しているか知らない人。

食べたいものも我慢して
やりたいことを我慢して
必死で体形を維持して
毎日毎日ウォーキングの練習。

足にまめができても
どれだけヒールが痛くても
平気な顔をして歩き続ける。

ストイックでなければ勝ち残れない世界。

もし、モデルになる前に戻れるなら
きっとバレーを続けて、
部活で仲間ができたりして
大学にも通って、彼氏を作って
普通に就職して結婚して…

考えても仕方のないことを
いつまでも思い浮かべてしまうのは
心が沈んでいる証拠だろうか。

イタリアに来た翌日
早速事務所に顔を出して
ウォーキングのレッスンが始まった。

１年間必死で練習したイタリア語は
聞き取れてもわかるのは半分くらい。

それでも怒られているということはわかって
理由がわからずに困惑する。

何度も何度も修正を繰り返し
足が痛くなるまでウォーキングを続ける。

『今日はここまでね』

ふらついた私を見かねて
先生が終了を告げた。

『これじゃパリでは通用しないわ』

先生がつぶやいた一言は
なぜかはっきりと聞き取れて
私の心をえぐった。