033 Yuki Side ページ33
半日いろいろと観光して回って
最後に彼女を連れて行ったのは
俺の一番のお気に入りの場所だった。
ランニングの途中でたまたま見つけた場所。
イタリアの町はそれぞれに個性があるけど
ここから見る景色は少しだけモデナに似ていて
始めてイタリアに来たときのことを思い出す。
最初は思い出したくもないと思ってたけど
今となってはあの時の経験があったから
今こうしてイタリアでプレーできて
代表にも選ばれているんだと思う。
誰にも話したくないと思っていたけど
彼女にだけは聞いてほしかった。
「俺も最初から上手くいった訳じゃないよ。
あたりまえだけど」
隣を見ると彼女は静かに頷いていた。
「高校時代は負けなしで
大学に入っても何でもうまくいって
代表にも選ばれて、何でもできるって思ってた。
だからイタリアに来た。
でもそこで違いを思い知った。
日本だからできてただけで
イタリアに来てからはうまくいかないことばっかで
試合にも出られないし落ち込むことばっかだった」
そのときのことを思い出しながら
俺は遠くを見つめて話を続ける。
「もうやめたい、帰りたいって思ってたときに
当時のキャプテンが飯に連れてってくれて
そのときの景色に似てるんだよね」
『今はここに来たばっかりだから
何もわからなくて不安だろうけど
おまえは賢いから大丈夫だ。
わからないなら、考えるな。
今やれることを、今できる精一杯を
続けていくしかない。
お前には才能がある。だから大丈夫だ』
キャプテンに言われたことは
今でもはっきり覚えてる。
うまくいかないとき、ミスが続いたとき
俺の道しるべになっている。
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作者名:Haruka. | 作成日時:2019年11月10日 20時