HERO【石川祐希】 (ページ4)

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004　Yuki　Side ページ4

全日本の朝は早い。
マサさんたちに朝の散歩に誘われて
遅れないように目覚ましをセットして寝たはずだった。

そのアラームが鳴るより前に
健太郎さんの言葉にならない叫び声で目が覚めた。

「健太郎さん、うるさいっすよ」

「いや、お前のいびきのほうがうるさいわ！
　じゃなくてさ、これ！！！」

目の前に差し出されたスマホに
視線を向ける。

ぼやけていた視界がだんだん晴れてくると
画面には昨日のモデルが映っている。

「あぁ、昨日の…で？」

「で？じゃねーよ！ちゃんと読めよ！
　ハルさん、イタリアに行っちゃうんだよ！！」

さらにスマホを近づけられてしぶしぶ目を通すと
活動の拠点をミラノに移すこと
最終的にはパリコレを目指して
これからは雑誌だけでなくショーに力を入れること
それから俺にはよくわからない
業界についてのいろいろが書かれていた。

ファッション業界はよくわからないけど
パリコレって俺らで言う
オリンピックみたいなもん？

ミラノも確か有名なブランドが多くて
すごいとこだって聞いたことがある。

それにしてもあったことがないのに
そこまで落ち込めるのはすごいと思う。

「日本にいても会えるわけじゃないじゃないっすか」

鳴る前のアラームを解除して
着替え始めてもまだ健太郎さんは
落ち込んだ表情でスマホを見ている。

「イタリアかぁ、遠いなぁ…
　ていうか、祐希もイタリアじゃん！」

何か言いたそうな健太郎さんを残して
俺は先に着替えを済ませて部屋を出た。