HERO【石川祐希】 (ページ21)

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「そろそろ寝ないと」

いつの間にかテレビの中の試合は終わって
3-0でシエナの圧勝だった。

画面では勝ったシエナの選手が
ヒーローインタビューに答えていた。

祐希くんは気にせずテレビを消すと
立ち上がった。

「おいで、
　ゲストルームこっち」

彼はきっと無意識なんだろうけど
その言い方に思わずキュンとした。

ついて行くと綺麗に整えられた部屋に
シンプルなベッドと簡単なテーブルが置かれていた。

「誰も使ったことないから安心して」

使ったことないとはいっても
彼はきっとまめな性格なのか
きれいに掃除が行き届いていた。

「ありがとう、
　じゃあ遠慮なくお借りします。」

「うん、おやすみ」

「おやすみなさい」

誰かとお休みを言うのはいつぶりだろうか。

ずっと一人暮らしをしていたから
ずいぶん前のことのように思える。

「俺の部屋、向かいだから
　なんかあったら言ってね」

丁寧にそう言い残して
彼も自分の部屋に戻っていった。

・

・

自暴自棄になって一人で旅に出て
助けてもらったのが日本人というだけでも
この異国では驚きなのに
それがまさかのプロのアスリートだったなんて。

やっぱりどうしても気になって
スマホで彼の名前を調べてみる。

ヒットしたサイトには高校、大学、そして代表での
華々しい経歴が書かれていて
調べたことを少し後悔した。