HERO【石川祐希】 (ページ3)

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003　Yuki　Side ページ3

代表合宿初日、
ミーティングを終えて早速自分の部屋に戻る。

荷物はすでに運び込まれているようで
フロントでカギを受け取ると
手ぶらのままエレベーターに乗った。

基本的に代表合宿は2人ずつの相部屋だけど
今日はまだ相手が誰だか聞いてない。

部屋に入ってもまだ誰もいなくて
適当に窓側のベッドに腰かけて
スマホをいじる。

今回の相部屋は誰になるんだろう。
できればマサさんかヤマさんがいいな。

しばらくしてガチャっと音がして
ドアが開いた。

「マジかよ！今回の相部屋祐希なの！？」

入ってくるなり健太郎さんが
かなり失礼なことを言いながら荷物を雑に置いた。

「お前、マジでいびきやばいんだよ」

「さーせん」

健太郎さんに文句を言われながらも
いつものことなので軽く受け流す。

・

・

「あ、そうだ、テレビつけていい？」

「どーぞ、どーぞ」

言いながら近くにあったテレビのリモコンを投げる。
健太郎さんとは学年で言うと一つ上の先輩になるけど
キャラクターもあってかそんな感じは全然ない。

「やべぇー！マジでタイプ！！」

テレビではモデルのハルさんというひとが
インタビューに答えていた。

確かに美人だとは思う。

日本人だけど背が高くて
ハーフにも見える顔立ちは
健太郎さんのタイプにピッタリだと思った。

「ハルさんバレーやってたんだって！
試合見に来てくれないかな！？」

「いや、普通に無理っしょ」

俺も同じテレビを見てるから聞こえてるのに
いちいち反応する健太郎さんは
正直面倒臭い。

ていうか、女子で180㎝もあったら
ウイングスパイカーとしては
かなりいい線行けるんじゃない？

もちろん身長だけで勝ち抜ける世界じゃないけど
十分武器になると思う。

バレー大好きな俺としては
どうしてもバレーと結び付けて考えてしまう。

「まさにモデルになるために生まれてきたようなスタイル」というインタビュアーの言葉に
引っかかるのはたぶん俺ぐらいだろう。

「別にバレーでもいいじゃん」

「え？なんて？」

俺の小さなつぶやきは
健太郎さんには聞こえてなかったみたいで
でも言い直すのも面倒で
俺はスマホに視線を落とした。