HERO【石川祐希】 (ページ10)

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010　Yuki　Side ページ10

練習終わりにチームメイトと飯に行って
買い物したりいろいろしていると
結構いい時間になっていた。

最近は自炊も始めたけど
今日はそんな気分になれなくて
外食してから帰ることにした。

といっても予約もなく入れる店は限られていて
家の近くまで帰ってきてから食べることにした。

店に入るといつものおばさんが迎えてくれる。

『ユーキ！よく来たわね！
　すぐあくからちょっと待ってて』

どうやら満席のようで
すぐに空くということなので
入り口近くの椅子で待たせてもらう。

メニューを見ながら迷っていると
店内でもめているような声が聞こえる。

いつもなら無視するけれど
イタリア語のなかに日本語が聞こえて
思わずそっちを見る。

「もう、何なのよ」

困ったような
怒っているような女性の声。

本当はガラじゃないんだけど
ここで無視できるほど非情でもない。

『すいません、俺の連れに何か用？』

見た感じイタリア人ではなさそうだけど
俺のイタリア語が分かったようで
何かつぶやきながら席に戻っていった。

『ありがとうございます。助かりました』

イタリア語でお礼を言いながら
深々と頭を下げるその顔は
昼間にレストランで見たあの人だった。