019 Yuki Side ページ19
モデル、という言葉を聞いて
俺のなかで既視感の正体が判明した。
全日本の代表合宿中
たまたま同室になった健太郎さんが
ファンだと騒いでいた人だ。
確かあのときはパリコレを目指して
まずはミラノで修行すると
無理矢理見せられたネットニュースで読んだ気がする。
そのときはモデルのハルに
そこまで興味を持っていなかったから
うろ覚えだけど、絶対そうだ。
モデルという全く未知の世界で戦う彼女に
聞きたいことはいっぱいあるけど
聞いてほしくなさそうな空気を感じて
俺は視線をテレビに戻した。
画面のなかではシエナの選手が
サービスエースを決めたところだった。
「うわ、痛そう」
隣で彼女が顔をしかめる。
まるで自分のことのように腕を押さえる姿に
思わず笑ってしまった。
「確かにあれは痛い」
自分も練習で受けたあのサーブの
重量感を思い出していた。
「俺、前はあのサーブを練習で受けてたから」
今度は彼女が目を丸くしてこっちを向いた。
「今はPallavolo Padovaにいる
プロのバレー選手」
「え、ほんとに!?」
自分だってパリコレを目指すすごいモデルなのに
その驚き方は見ていて気持ちいい。
「もしよかったらさ、
明日の試合見に来ない?」
驚いた表情のまま彼女は何度も頷いた。
身長の割に動きは小動物みたいで
その動きに、今はドイツにいる先輩を思い出した。
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作者名:Haruka. | 作成日時:2019年11月10日 20時