シンデレラにはなれない ３【登坂広臣】

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“登坂さんとNANAさん入ります！”




そんなスタッフさんの声で私達は現場入りをした。

お互い結婚式の主役達が着るような服の黒バージョンの衣装に着替え、監督さんと最終打ち合わせをする。


さっきの伶菜とのシーンと似てるけど今回は立って、向かい合って歌う。


ウェディングドレスの裾をビリビリに破かれたようで、胸元も少し裂かれている。

シンデレラのお話の中に出てくるようなガラスの靴が真っ黒で、さっきそれに合わせて爪も真っ黒に塗った。


メイクも濃いようにして、黒髪をストレートに下ろし、口紅も真っ黒。


目の前に立つ登坂さんはワイシャツを所々裂いていて、かっこよさそうな靴もわざと土埃で汚してる。

こんなに汚してもカッコイイって罪な気がする…




登坂｢NANA、顔上げて｣

『はい』




顔を上げれば手が届きそうなところに登坂さんがいて、こっちを見て笑ってくれる。




音楽が───────────流れた




登坂さんをまとう空気が代わり、“広斗”の顔になって緊張に包まれる。

私も負けじと“ナイフ”の顔をする。







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