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『なんか撮影ってあっという間だね』
そうAちゃんが言ったのは兄こまのメンバーで軽い打ち上げをしていた時だった。
20歳を超えたAちゃんだけど片手に持ってるのはレモンサワーに見せかけたレモンサイダー。
“一番は家族と飲む予定なんです”って申し訳なさそうに頭を下げたAちゃんにスタッフさん達も嫌な顔一つせず了承していた。
そんなAちゃんについて思うことが1つ。
聞いていいのか分からなくってずっと気付かないふりをしていたけれど、ここ神奈川に来る前の事務所での出来事。
僕を迎えに来たのはイケメンで有名のAちゃんのマネージャーさんで、車に行ったらAちゃんと何故か臣さんがいて、2人抱き合っていた。
びっくりした、と言うよりも、ああお似合いだなって傍から見てそう思っていた。
“時間ちょうだい”と言ってドラマの主人公のようにAちゃんの腕を引いて走っていった臣さんのあんな必死な顔を僕は見た事がなかった。
付き合ってるならあんなに周り見なくてもいいんじゃないの?って思ったけど逸さんも何も知らなかったらしい。
15分が経過して逸さんの舌打ちの回数が多くなってやっと戻ってきたAちゃんは、泣いていた。
こんなにも切ない表情の涙はあるのかって言うほど綺麗で儚くて、思わず拭いたくなるような涙だった。
その涙を見て、夢のことを思い出したのは僕だけの秘密。
そして悟ってしまった。Aちゃんと臣さんの恋愛は、決して幸せなものじゃないんだって。
だって、臣さんを見るAちゃんの目は、僕と同じだったから。
片寄「そうだね、あと2ヶ月くらい?」
『もう1ヶ月経ったんだね。あっという間』
片寄「楽しい?撮影」
『そりゃぁね。初めての撮影だけど、すっごく楽しい』
んふふって笑うAちゃんからは想像すら出来ないあの時の涙。
うーん、やっぱり気になる。
片寄「ねぇAちゃ」
その言葉を遮ったのはAちゃんの携帯から流れる着信音。
『あ、……ごめん』
周りをキョロキョロして出てもいいのかって確認するから僕も一緒に見渡す。
片寄「もうみんなお祭り騒ぎだから主役いなくなっても分かんないと思うよ笑」
『うん、そうだね。ちょっと行ってくるね』
行ってらっしゃいと見送ったAちゃんは駆け足で部屋を飛び出した。
チラリと画面に映った電話の相手の名前は、“登坂さん”だった。
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shirey(プロフ) - なんか苦しいですね、、(;_;)主人公ちゃんを救ってくれるのはもちろん、、 (2018年10月23日 21時) (レス) id: eae9c1c1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラベン | 作成日時:2018年10月16日 16時