シンデレラにはなれない３【登坂広臣】 (ページ34)

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あれ？息を吸うんじゃないの？と不思議に思いながら肺の中に入った苦しい空気が口内までもを侵す。

なんか悔しい、って思いながらもう一度口元へ持っていき今度は口の中に含むように吸ってみる。

─────────────あ、

何度か吸い、口から離して宙に吹くように吹き出して見せればクルクルと舞いながら溶けて行った。

ああ、彼がタバコを吸うのはこういう事か。

タバコ依存症がなぜあるか分かった。

甘く苦く、…脳が痺れるような感覚を起こす。

まるで恋愛のような──────そう、この感じは登坂さんへの気持ちと似てる気がする。

そして私は気付いてしまった。

“私まだ未成年！！！！！！！！”

慌ててまだ長いタバコを携帯式灰皿の中へ押し付けた。

まずいぞ、やってしまった。

これは犯罪になってしまうのだろうか。

これは、た、逮捕？！？！？！

まずい、どうしようどうしようと頭の中で思っても心の中では、“少し登坂さんに近づけた気がする”となんか呑気だった。

あと数時間後には20歳を迎える。この部屋に監視カメラとか盗聴器とかない限り平気だ。と、思う。

だからそれまで…と、そっと、ベッドサイドにある棚の中へと押し隠した。

時間を見ればあとすこしで逸さんが迎えに来る時間だ。

まぁ、少し早いけど行こうか。

まだ登坂さんの香りの片割れが残るその部屋を、まるで封じ込めるように扉を閉めて軽い足取りで家を出た。

『──────────行ってきます』

初めて付けたライターのあの火は儚くて、だけどキラキラと魅力的で何かに似ていた気がする。

あれは──────────なんだったのだろうか。

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