____ 花火(1) ページ33
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あの後、一通り泣き尽くしたあと、夏恋といつの間にか一緒に泣いていたらしい萩花と伶菜と4人で大笑いをした。
登坂さんと私の関係についてはもう誰も何も言わなくて、ただ萩花には“無理はしないでね、ホントに”って念を押された。
そのまま収録したけど皆鼻声で湯田さんに笑われた。
そんなことがあったけどまぁどうにかなって、このまま兄こまの撮影のため神奈川に行くことになる。
つまり、私は誕生日を兄こまのメンバーと一緒に迎える事になるのか。いやもしかしたら車の中かも……とスケジュール帳を見ながら思う。
そんな私に、一旦家に帰って荷物まとめてこいと家の前で逸さんに落とされた。
1088に帰ってボストンバッグを開く。
久しぶりの、家。
自分の家なのに生活感がまるでなくてびっくり。
そんなぼーっとしてる時間もないし急がなきゃと手を動かす。
1泊2日分のコスメ、日用品、洋服、とかを全て入れ終わってふと気がつく。
……あれ、なんでタバコなんて…。私、タバコ吸ってないよ。
ベッドサイドにポツンと置かれていたのは一箱の中に10本弱入っているタバコと、見覚えのある青い色のライターと、携帯式灰皿だった。
登坂さんだ、って思ったけど1度伸ばしかけた手は戻ってくれなくて。
指先で触れたそれは冷たく、柔らかかった。
箱の中から1本取り出して、あの日あの人が私の部屋でベッドに座りながら吸っていたように。
目を閉じれば直ぐに浮かんでくる彼の姿に笑みを漏らしながらベッドの上に座る。
左手の人差し指と中指で白く細長いそれを挟んで、反対の手でライターの金具に指をかけて下ろす。
だけどカシュッ、なんて情けない音を出して空振り。
でも、登坂さんがやった時はもっと音が重くてそのすぐあとにシュボッと火が出る音がしたのに。
懲りずに何度かカシュッ、カシュッ、と繰り返しているとお情け程度の淡い炎がチロチロと揺れ現れた。
慌てて左手に持っていたタバコを炎に近付けると、ヂリヂリと音がして燃え始めた。
それをそのまま口元へ持っていき咥えてみる。
あの人は、すぅと息を吸って─────
『っ、ゴホッゴホッ、ぅえ、っ、』
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shirey(プロフ) - なんか苦しいですね、、(;_;)主人公ちゃんを救ってくれるのはもちろん、、 (2018年10月23日 21時) (レス) id: eae9c1c1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラベン | 作成日時:2018年10月16日 16時