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今市「え、どうしたの?なんかあった?」
ボロボロと零れ落ち続ける涙をそのままに呆然とする私の左隣に座った今市さん。
今市「入った瞬間の空気が変だったから咄嗟に嘘言っちゃったんだけど、どうしたの?大丈夫?」
ああ、言われた内容、聞かれてなくてよかった。
この数ヶ月だけで私はよく知っている。事務所に所属する人達の仲間意識の強さと絆の強さを。
だからあの言葉を今市さんが聞いてしまえばきっと怒ってしまう。
だけど怒って、みんなと一緒に作り上げてきたせっかくの音楽を、あんな人のせいで潰したくなんかなかった。
今市さんのその問いかけに、なんて言えばいいのか分からなくって。
こんな事で泣いてるって呆れられるかもしれない、どうしよう、泣き止まなきゃって目頭に力を入れて耐える。
けれど、涙は勝手に落ちてきて止まってくれない。
オロオロし始めた今市さんは右手で私の頭をそっと撫でた。
……違う。その手は、私の求めてる手のひらじゃない。
なんて、こん時にでも手の大きさや温度の違いに違和感を持つなんて、どこまで私はあの人に支配されてるんだろうか。
そんなことを考えていたらなんだか冷静になってきて涙が少し止まった。
『……すみませんでした』
今市「いや全然いいんだけど、なんかあった?」
『私が弱いだけなんです、私が、もっと頑張ればいい話なんです。ごめんなさい』
今市「いや、謝らなくても…」
ね?って私の顔をのぞき込んだ時だった。
登坂「あ、いた。ストレートティー自販になくてめっちゃ遠くの所にあったんだけど……って、あれ、隆二?」
今市「あ、臣」
その声にパッと声がした右側の方へ顔を上げて見てみれば、お水と、私の好きなストレートティーを持った登坂さんがちょっと遠くにいた。
駆け足で駆け寄りながらそう言うから、やっぱり私はこの人が好きなんだなぁって感じちゃう。
片眉を上げて私を見下ろした登坂さんは笑っていたけど今市さんの顔を見た瞬間に綺麗な顔を少し歪めて私を睨んだ。
登坂「……は?…A?なんで泣いてんの?」
だけど、その睨んだ目も私と目が合った途端に心配の色に染った。
ねぇ、そんな顔をするから一々私は勘違いしそうになるんだよ。
あなたに心配されるって、あなたの感情が私のせいで揺れ動いたって、そんなの、勘違いするじゃない。
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shirey(プロフ) - なんか苦しいですね、、(;_;)主人公ちゃんを救ってくれるのはもちろん、、 (2018年10月23日 21時) (レス) id: eae9c1c1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラベン | 作成日時:2018年10月16日 16時