Episode8 ノーカン ページ9
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日曜日の朝。
梅雨の真っただ中だけど幸い天気は曇り。
雨が降り出すかどうかは運次第、というところだろう。
某テーマパークの最寄駅。
私はそれなりに着飾った格好で駅の外に向かう人の流れに乗っていた。
わかってたことだけどすっごい人。
密度が高いせいで薄着の上着の下にじとりと汗がにじむ。
「あ、Aさん、こっちです！」
「二宮さん！お待たせしてすみません」
駅を出てすぐの柱のところで二宮さんが待っていた。
いつものカチッとした格好ではなく、かなりカジュアルな装いだ。
雑踏に負けないようにちょっと大きな声を出している。
人の間を縫って二宮さんに駆け寄る。
「大丈夫でしたか」
「はい、なんとか」
「すみません現地集合で」
「いえいえ。この方がわかりやすくていいですよ」
人の波に乗ってゲートに向かう。
休日とはいえ天気が怪しいからか思っていたよりも混んではいない。
それでもちょっと目を話したら二宮さんのことを見失いそうだ。
「すごい人ですね。逸れないようにしないと」
「あっ」
自然と手を取られて思わず声を上げる。
私の顔を見た二宮さんは一瞬不思議そうな顔をした後思い出したように手を離した。
「すみません、逸れないようにしようと思ったらつい」
ちょっと顔を赤くして申し訳なさそうに目をそらす。
その表情になんだかドキドキしながら私は首を振った。
「いえ…すみません声だしちゃって」
「いや、恋人でもない男に握られたらそりゃ嫌ですよね、すみません、気を付けます」
薄い眉を下げて二宮さんは一歩先を歩き出した。
慌ててその背中を追う。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年7月10日 15時
