Episode12 -2 ページ42
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これは…まずい。
そう思いながら私は満員電車に揺られていた。
押し付けられた窓の向こうには晴れた空が広がっている。
車内モニターの天気予報には午後から大雨注意の文字が流れていた。
会社への道のりを歩きながらまた考えるのは二宮さんのこと。
「はぁ…」
四六時中頭から離れないこの感じには覚えがある。
私はどうやら、二宮さんのことがすっかり気になってしまっているらしい。
まだ好きなのだと結論付けることはできないけど、確実に二宮さんに心が寄っていることは間違いない。
恋愛なんて久しく縁がなかったからこのどこか地に足が付かない感じの独特の浮遊感が落ち着かない。
でもなぁ…。
私は晴れた空を見ながらまたため息を吐く。
二宮さんは何度も私に好きだと伝えてくれた人だ。
私が手を伸ばせばその手を取ってくれるかもしれない。
だけど。
零時を回って一緒にいることはできない。
智兄さんとの門限の約束がある。
智兄さんとの約束を破ろうとは思わない。
けれど、門限があるから一緒にいられない時間があるというのはちょっと寂しい。
「……はぁ」
私はまたため息をついた。
そう、このもやもやの正体はたぶんこれだ。
淡い恋心でも仕事が手に付かないからでもない。
「智兄さんとの門限の約束」に行動を縛られている、という風に感じ始めていることだった。
兄さんとの約束は破りたくない。
もうあんな悲しそうな顔を兄さんにはさせたくない。
だけど、もう少し長く二宮さんと一緒にいてみたい。
先日だってもしかしたら、兄さんとの門限が私になければ「帰りたくないです」なんて浮ついたセリフの一つも言えたかもしれないのだ。
まあ、そんな言葉を口にする勇気が私にあったとは思えないけれど。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年7月10日 15時
