Episode11 -4 ページ35
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同じ個室でも先日の居酒屋とは訳が違う。
ダウンライトの明かりに照らされた広い個室にはワインレッドのテーブルクロスがかけられた二人用のテーブ。
磨かれたグラスにウエイターが洗練された所作で白ワインを注いでいった。
「じゃあ、まずは乾杯ということで」
「はい」
グラスをそっと持ち上げて顔の前へ掲げる。
「では、ようやくできた初デートに乾杯」
「乾杯」
二宮さんが予約してくれていた都心のレストランはずいぶんと高級そうなお店だった。
仕事から直接来た私はフォーマルな格好をしているわけではないから個室に通されるまでの間は場違い間にソワソワしていたんだけど個室の中ならばそんなに気にすることもない。
ワイングラスに自分の顔が映って、ちょっとだけへこむ。
デート用の化粧じゃないよね。
「Aさん？お口に合いませんか？」
「あぁ、いえいえ、デートに来る格好ではないなぁと思いまして」
「なんだ、そんなことですか」
軽く言った二宮さんは眉を下げて首を振る。
「貴女はどんな格好でも可愛いですから気にしなくていいですよ」
「っ…」
またそんなさらりと。
頬が熱を持つのがワインのせいだと思いたい。
私はあわてて話を逸らす様に話題を探す。
「そ、そうだ…私、こんなお店初めてです」
「あ、よかった。実は俺もなんです」
二宮さんはそう言って苦笑い。
その言葉を聞いて私は肩から力を抜いた。
てっきり二宮さんはこういう場に慣れているのかと思っていた。
「そうなんですか？」
「ええ」
「……今まで女性と一緒に来たこととか、ないん…ですか？」
恐る恐るそう聞いてみる。
二宮さんは首を縦に一度だけ振った。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年7月10日 15時
