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Episode10 -4 ページ27
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「あっ！」
「おい…！」
焦ったような櫻井さんの声を聞きながら私は手を伸ばす。
中腰の態勢から急に動いたからかバランスを崩してプリンを両手で受け止めた後そのまま手の甲がパソコンのキーボードに墜落した。
ガタン！と大きな音がする。
それに次いで、「消去しました」という謎の電子音が聞こえてきた。
「……は？」
「……え？」
「………なんですって……？」
櫻井さん、松本くん、それから私の間抜けな声が漏れる。
それから私はブリキの人形にでもなった気分でギギギと首を動かして自分のパソコンの画面を見た。
「ぎゃー！」
「ふざけんな大野ちょっとそこどけ！」
可愛くない悲鳴を上げる私を押しのけると櫻井さんはマウスを手にパソコンをいじる。
しかし、そこに先ほどまで浮かんでいた作りかけの資料は綺麗さっぱり無くなってしまっていた。
「消去完了」という残酷な文字が画面の中央に浮かんでいる。
「………」
櫻井さんが長めに沈黙している。
私は背筋に冷たいものが走るのを感じながらゆらりと後ろへよろめいた。
「大野…」
「はい…」
低い声で呟くと櫻井さんがゆっくり私を振り返る。
「お前なんのボタン押したんだ！」
「わかりません！ごめんなさい！」
手放すタイミングを逸したプリンを握りしめながら私は大きな声でそう叫んだ。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年7月10日 15時
