Episode10 手放してあげたりしませんよ ページ24
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昨日はずいぶんと天気が良かったのだけど、今日は一転絵に描いたようだ梅雨空だ。
太陽は分厚い雲に遮られて姿すら確認できない。
どんよりとした空気が漂う外を見ているとトントンと後ろから肩を叩かれた。
「あ、二宮さん」
「おはようございますAさん。どうかしましたか？」
「いえ、ただ、天気悪いなぁと思ってただけです」
部屋を見渡すと会議室の中には私と二宮さんしかいなかった。
さっきまで何かを話し合っていた櫻井さんと住吉さんの姿は見えなくなっている。
飲み物でも買いに行ったのかもしれない。
「梅雨ですからね。俺誕生日はかなり高確率で雨降ってますよ」
「あはは、梅雨生まれだとそうなりますよね」
ガラス窓を打つ雨粒は遠慮がちに音を立てていて私たちの会話を邪魔したりはしない。
「ところでAさん、明日は予定通りで大丈夫ですか」
「はい、大丈夫ですよ」
明日は二宮さんとお食事に行く日だ。
麻布の方のお店を予約してあると昨日チャットアプリで教えてくれた。
「楽しみです。ようやくAさんと大人っぽいデートが出来ます」
「今までのは大人っぽくないんですか？」
笑いながら聞き返すと二宮さんは唇の端を持ち上げて、
「あれは半分仕事ですから。ノーカンです」
とすました声で言った。
「でしょ？」
「ふふ、そうでした」
私はまた口元を緩めながら返事をする。
とそこで会議室の扉が開いた。
姿を現したのは櫻井さんで私たちを見つけると「ニノ」と声を掛けながら手招きをする。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年7月10日 15時
