Episode9 -4 ページ21
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翌週の中頃。
出かける準備をしていると智兄さんがスマホから顔を上げた。
「A」
「なに？」
名前を呼ばれて智兄さんを見る。
「お前今日の夜時間ある？」
「あるよ。八時前には会社出られるはずだし」
「じゃあ合流して飯食って帰るか」
「え、合流できるの？」
「おう。終わりの時間が早まった」
智兄さんはちょっと嬉しそうに言う。
基本的に時間に縛られるのが苦手な人だ。
「そうなんだ。食べる食べる」
「よし。んじゃ会社まで迎えに行くから」
「来てくれるの？別にいいよどこかの駅で待ち合わせでも」
「そんなに遠くないしな、気にすんな」
「そっか。ありがとう」
智兄さんの職場と私の職場は電車で数駅のところにある。
お昼を一緒に食べる時があるのもその影響だ。
智兄さんとの予定をスケジュールに入れてから私は家を出た。
梅雨なんだから仕方がないけど今日も飽きることなく雨が降っている。
雨粒を払い落とした傘を傘立てに入れて私は会社の扉を押し開けた。
デスクのある部屋に入ると私を見つけた櫻井さんが片手を上げた。
「おはよう大野。いいところに来た」
そのまま手招きされて私は櫻井さんへと歩み寄る。
「おはようございます。何かありました？」
「ああ、あった。ほらこれ見ろ」
櫻井さんが一枚の紙を私の眼前に掲げた。
そこには大きく「コラボカフェ関係原案」とゴシック体の文字で印字されている。
「コラボカフェ……？」
そのまま文字をなぞった私は首をかしげる。
それから言葉を頭が理解し始めて、ようやく目を見開いた。
「えっ、コラボカフェやるんですか？」
「そうだ。お前も松本と似たような反応だな」
笑いながら櫻井さんは手短に状況を説明してくれた。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年7月10日 15時
