Episode9 -3 ページ20
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「でも、やっと二人で飲みに来れましたね。最初のステップのつもりだったんですけど」
「そうですね。すっかり他のことばかりで」
なんたってデートの方が先だったくらいだ。
飲みの場というのはいつもほかの誰かが一緒だったし、二人で飲みに来るというのは以前コーヒーを飲んだ時以来のシチュエーションだ。
もっとも、コーヒーは飲みの場には含まないけれど。
「午後の打ち合わせはどうでしたか」
「そうですね、今のところ…」
私たちの共通の話題と言えばやはり仕事のことなもので、ついつい話題は仕事へと流れがちだ。
「じゃあしばらく食事は無理ですかね」
「そうですね…でも全く時間がないわけじゃないですし、どこかで行きましょう。お休みの日に」
私は手帳に目を落としながら言った。
二宮さんは日本酒を傾けながら自分のスマホを見ている。
スケジュールはスマホで管理するタイプのようだ。
「来週の土日あたりはいかがですか。さすがに休日まで仕事が入る感じではないですよね」
「そうですね。今のところはまだ。……というか、今でなければ忙しくなるばかりですかね」
「ですよね」
私たちは顔を見合わせて苦笑い。
発売に近づけば近づくだけ休みなんてものはなくなっていく。
今はまだ休日に休む余裕があるからお出かけするなら今のうちかもしれない。
「ではその日で」
「わかりました」
その場で簡単な約束を取り付ける。
来週の土曜日は確か智兄さんは帰りが遅かったはず。
少し長めに一緒にいられるかもしれない。
そんなことを思いながら私は手帳に新たな予定を書き込むのだった。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年7月10日 15時
